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ムスティクのぼうけん

子どもが眠くなるのはどうしてか?

 

それはね、眠りの精の「砂売りおじさん」が 目の中に砂をたらしこむためなんです。

ヨーロッパではそう言い伝えられており、子ども時分はみんなが信じています。

 

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『ムスティクのぼうけん』 Moustique et le marchand de sable

 

なに、それ?きっと誰も知らないお話でしょうね。

私が子どものころのフランスの児童文学・・・ちょっと古いけど。それは写真を見てもわかります(笑)。箱がボロボロ。本の表紙は箱の絵と同じです。

ポール・ギュット( 作)塚原亮一( 訳)センバ太郎 (絵)

シリーズ名 新しい世界の童話シリーズ 11 学習研究社1966年(*)

f:id:cenecio:20160602112315p:plain原書。少年の名前がムスティク。

Moustique et le Marchand de Sable Cartonné – 1 janvier 1957
 PAUL GUTH (Auteur)

 

ムスティクは という意味。なぜってちびで手も足も小さく細く、なのにびっくりするほど元気いっぱいだから。朝、顔を洗う時、水を天井まで飛ばすし、歯ブラシは喉につまらせるし、服を着るときもズボンを破いたり。

学校でもじっと座ってなんかいないし、家に帰れば口いっぱいに食べ物をほおばり、庭に飛び出したかと思うと跳ねまわり、木登りし、また食堂に舞い戻ってはパンで遊びだすしまつ。

夜もなかなか寝ません。お母さんが言う。

「目をつぶってごらん。すぐに砂売りおじさんがやってくるわ」

するとムスティクは、砂売りおじさんに会いたいからずっと目を開けている、と言い張ります。幾晩も遅くまで起きていますが、おじさんには会えません。とうとう風邪をひいてしまい、熱にうかされて見た夢のなかで、白マントをはおり、口ひげをはやした男に出会います。ガラス瓶をぬっと差し出すや、ムスティクの目にさらさらと砂を流し込むのでした。

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ムスティクはこちらから出向くことにします。何週間もかかって食料をためこみ、準備をし、両親に手紙も書いて、さあ出発!

海岸行きの汽車に乗り、浜辺に着きました。そこで砂売りおじさんを捜しますが見つかりません。ひょんなことでホテルの支配人と知り合ってエレベーターボーイの仕事をもらいます。仕事をこなしながら、世界地図を研究し、アフリカに向かうことに。

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マルセイユまで列車で行き、そこからアフリカ行きの汽船に乗せてもらいました。

ムスティクはアルジェの南にあるサハラ砂漠が、世界中で一番砂のたくさんあるところだと知っていました。

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陽気なトラック運転手三人と知り合い、トラックに乗せてもらいます。彼らもちょうどサハラ砂漠にむかうところだったから。

ムスティクが砂売りおじさんを捜しにいくことを告げるとおれたちも同じ方面に行くのだから手伝ってあげるよ」。

空の星も砂漠の砂とおなじようにたくさんあるなあ、とムスティクは感心しています。砂漠の王様は砂売りおじさんで、空の王様は神さまです。ムスティクの頭の中で、砂売りおじさんと神さまがごちゃ混ぜになってしまいました。

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 砂売りおじさんは熊手で砂をかき集め、空では神さまが星をまきちらします。

 

地下に広がる町

サハラ砂漠の熱いことといったら!おじさんが見つからないのは、もしかして涼しい地下で暮らしているのでは?ムスティクはそう考えます。

地下の町にはエレベーターで降りていくのです。するとパリのコンコルド広場よりも広い広場に着きました。

その広場は「とびきり上等の砂の広場」という名前で、砂の像が立っています。太古の昔から砂を作ってきた、有名な砂つくりの偉人たちの像です。

 

12本の通りのなまえがおもしろい。下のページでどうぞ。

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それぞれの通りには砂でできた家がならんでいる。砂でできたテレビ画面には、砂でできた写真が映っていますが、ひっきりなしに崩れ落ちている。

砂をつくる工場やベルトコンベヤーのあるところを通りぬけて、「砂売りおじさんの広場」にやってきました。

砂売りおじさんの玉座は金色でぴかぴかと眩しくて、おじさんは玉座にどっかり座っていました。

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おじさんは労働者たちに指図をしています。そこでつめている砂は、「とてもとても細かい砂一号」という種類でした。びんというびんには、子どもたちを眠らせるときに使う砂がぎっしりと詰まっていました。女工さんたちはびんを小さな箱に詰め、送り先の番地を書いていました。

ムスティクは切手集めをやっていたから、小箱に世界中の切手が貼ってあることに気が付きました。驚いたことに、自分宛ての小箱を見つけました。

「ムスティク用。送り先、両親の家…」

両親の家、という字にハッとして目をさましました。トラックに揺られながら眠っていたのでした、

両親は自分を捜しまわっているだろう、どんなに悲しんでいるだろうかと考え、泣き出したいきもちになりました。

朝の太陽が顔を見せたころ、砂漠の上に広がる空は薔薇色に染まり、遠くのほうに、高い鉄の柱と小屋が見えました。

「さあ、やっとついたぞ」運転手がいいました。

「あの鉄の柱は何なの?」

「あれは、石油をくみ出すための井戸だぞ」

トラックがとまると運転手が言います。

「さて、これから坊やを驚かせてやるぞ」

「じゃ、砂売りおじさんに会わせてくれるんだね」

働いている人たちが興味しんしんで、その子はだれだと聞いてきます。立ち並ぶ労働者用の小屋の3番目に来ました。

「さあ、ここだ」

小屋に足を踏み入れたムスティクは、思わず、あっと叫びました。

ひとりの男が椅子に腰かけてオレンジジュースを飲んでいました。それはおとうさんだったのです。

「やっ、ムスティク!わたしのかわいいムスティク」

おとうさんはジュースをひっくり返してしまいました。

砂漠の真ん中で砂売りおじさんに会えたらどんなに嬉しかったでしょう。でもおとうさんに会えたほうがずっとずっと嬉しいことでした。

おとうさんはフランスで一番の腕利きの石油技師で、これまでもいくつも油田を発見した人です。

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ムスティクが家を出てから、新聞やテレビに写真が乗り、ラジオも繰り返しムスティクのことを放送しました。

「名前はムスティク。小さな男の子です。小さな目、小さな顔・・・。」

トラックの運転手が新聞の写真を思い出してくれたおかげで、お父さんに会えたのです。

次の日、二人はフランス行きの飛行機に乗りました。

「砂売りおじさんはどこにいるんだろう」

「おまえが眠るたんびに、すぐにやってきてくれるよ。目をつぶらないと、おじさんは現れないんだ」

「じゃ、目をあけたら?」

「とたんに姿を隠してしまう。いいかね、この世で一番美しいものは、毎日の暮らしの中のあるのだ。しかもその美しいものは、目をつぶったときにだけ見えるのだよ」

「おやすみ。砂売りおじさん」

ムスティクは低い声でつぶやいて、そのままぐっすりと眠ってしまいました。

(おわり)

 

著者  ポール・ギュット(1910.ー1997)

フランスの小説家,ジャーナリスト。高校教師を経て文筆活動に入る。

自伝的な小説『世間知らず』 Mémoires d'un naïf (1953) とその連作小説ナイーブシリーズや『お痩せのジャンヌ』 Jeanne la Mince (60) シリーズなど、ユーモア小説で人気を博した。

児童向けではムスティク少年を主人公とする本書のほか、『ムスティックと青ひげおじさん』『ムスティック月へ行く』など。

 

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Paul Guth Stock Photos and Pictures | Getty Images

左:サイン会のポール・ギュット

右:書斎のポール・ギュット

 

我が家にあるギュットさんの

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中央の数冊がギュットの小説です。

たぶん今はもう読まれないでしょうけど、1950 ~70年代にかけては人気作家で、サイン会にはご婦人方に囲まれたようです。

  

追記:参考までに

(*)新しい世界の童話シリーズ (学習研究社1966年)

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みなさんはどれを読んだことがありますか。