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キツネ  Fox (Margaret Wild & Ron Brooks)  

キツネ

マミーさんから教えてもらった絵本です。

前回『きつねのかみさま』を扱ったので。

本当に教えてもらえてよかった。自分では絶対にたどり着けなかったから。

私の絵本との出会いは幾分受動的ですが、それでいいんだと思っています。

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2004年出版のオーストラリアの絵本です。

イラストのRon Brooksにはやられたなあ。ガツンと頭を一発叩かれたような。しかも年末にこの衝撃ですよ。いやあ、参った!

絵も手書きの文字も凄かった。異様な手書きの文字がただ事ではない雰囲気を醸し出し、ザラザラとした気持ちで読み進むことになります。

 

表と裏の表紙いっぱいの赤いキツネ(上記)、こっちをじっと見ている。後ろには荒れ野が広がっていますが、色調が暖色のせいで特に寂しい感じは受けないです。ええ、今のところは…。残念ながらストーリーにはどうしても触れてしまいますね。

 

おはなしは・・・

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https://s-media-cache-ak0.pinimg.com/originals/3e/d5/ad/3ed5adcb1f712c87040ef2345a90e1ad.png

イヌは、森が焼けてケガをして飛べないカササギを口にくわえ、

介抱してやろうとねぐらの洞穴まで運んできます。

カササギは、余計なお世話だ、自分はどうせ飛べない、と言います。

するとイヌは、自分も片目が見えないんだと答えます。

一緒に暮らすうちに互いがかけがえのない存在になっていきます。

カササギはイヌの背中に乗って林や茂みを駆け回ります。カササギはイヌの目になり、イヌはカササギの「羽」になるというわけです。

 

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月日が流れ、冬が過ぎ、春になったころ、一匹のキツネが現れます。

カササギは不気味さを感じ取るのですが、イヌは一緒に暮らそうと迎え入れるのでした。

キツネの体、すごいですね。まるで通せん坊するみたいな、暗示めいた描き方でうなりました。

 

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カササギはキツネを警戒し、その目を恐れます。(ここだけ原書のページを借りています)

夜になるとキツネの匂いが洞穴いっぱいに広がります。

怒りと妬みと孤独の匂いが。(訳)

rage, envy, loneliness!

ところがイヌはちっとも危険を感じておらず、カササギの忠告にも耳を貸しません。

キツネはカササギを誘います。自分はイヌより速く走れる、まるで「飛ぶ」みたいに。

三度目でカササギは折れてしまい、キツネの背に乗り林を駆け抜け、これこそ飛ぶことだ、と有頂天です。

森を抜け、赤い砂漠まで来ました。するとキツネはカササギを振るい落とし、言い放ちます。

おまえもイヌも、ひとりぼっちがどういうものか、わかるだろう、と。

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さっきのキツネと肢体が似ていますが、目は冷たく光っています。

 

 カササギは打ち砕かれた思いで、ここで死んでしまいたい気分です。

しかしイヌが目覚めたらなんと思うだろう、自分がいないことに気づいたら…。

カササギは立ち上がり、遥か遠くのわがや、洞穴目指して一歩一歩進んでいくのでした。

(ここで終わります)

 

写真は10周年記念版。

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An Illustrated Guide: Fox written by Margaret Wild, illustrated by...

 

絵本ですから子供も読みますよね。子供向けの本ではふつう、人は間違ってもいい、失敗してもやり直せる、と前向きなメッセージを送るものです。

しかし私たち大人は、小さなミスで大切なものを失ってしまうことがある、しかも永久に。人間関係のちょっとしたほころびで、悲劇や不幸のどん底に…ということだってあるとわかっています。人との関係はとても脆弱で、しばしば悪意やネガティブな力の方が優位にたつことを教わってきました。

キツネは皆がなかよく幸せになるのとは対極の、皆を自分とおなじくらい孤独で寒々とした生活に追いやり、嫉妬心を鎮め、満足感や支配する喜びを得るのです。まるでサイコパスですね。

カササギがイヌのもとへたどり着けるか、子供たちと話し合ってみるとおもしろいでしょうね。

 

本の作者

Ron Brooks

絵本画家、絵本作家、イラストレーター、(オ-ストラリア在住)

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https://www.youtube.com/watch?v=bJycrXNsGjs

 

Margaret Wild (南ア生まれ、オーストラリア在住)

http://www.thelitcentre.org.au/author/margaret-wild

f:id:cenecio:20161212164704p:plainMargaret Wild

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