読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

キツネをめぐる コメントまとめ

キツネクラブのみなさん、こんにちは(笑)。

 

コメント欄を閉じると、皆さまのすばらしいコメが読めなくなるので、

本の内容に関した部分だけ抜き出してまとめました。

省略の部分が多いんですが、そこは許してください。

また自分のコメントは載せないでほしいという方、どうぞおっしゃってくださいね。

 

f:id:cenecio:20161212141520p:plain

2016年12月12日

Mさま

(略)ラストのページを読んだときの衝撃・・・。
どのページにも、なんとなく漂う不安感。
子ども向けの絵本とは思えないくらいの作品でした。
今も、カササギの運命や取り残されたイヌの気持ち、去って行ったキツネの胸中なんかを思い出して、ちょっとどんよりしてしまいます。

セネシオ:(略)私のはレビューにはなっていません。とにかくショックが大きくて、もうちょっと時間をおいてまた読んでみてもいいよね、と思っています。読みかえすとさらに怖くなったりして…?おお、ブルル…。
よくこんな絵本がオーストラリアから出てきたものだと思いました。
ラストから2枚目の絵、洞穴ですけど、中にイヌがまだ(眠っていて)居るのか、それともカササギを探しに外へ出ていないのか…などの謎があり、そんなことも含めて凄い本に出合ったものだと思います。

Sさま

(略)図書館でこの本を読んでまいりました志月です。

感想『マジか...』

衝撃的でした...
絵本の概念を覆されました。
絵本って、どこかで、子供のものだと思っていたんですよね。
大人が絵本を楽しむことも普通にあると思うんですけど、それは子供向けのシンプルなメッセージが大人の心に刺さるからだろうと。なんとなくそう思っていました。
でも『きつね』を読んで思いました。
作家さんにとって、子供向けとか大人向けとか関係なく、ストーリーを最もいい形で表現できる方法が絵本だということもあるんだろうなぁと。
あのキツネの仄暗い目と底知れぬ怜悧さ...記憶に刻み込まれてしまいました。それは、このお話が絵本だったから、だろうなと。
こういう種類のお話を出版する大人たち、カッコいい(^^)
というわけで、またもや目からウロコが落ちたのですが、『遅っ』って言わないで下さいね。 ②

Mさま

Sさまも読んでくださったとお聞きしてうれしくって飛んできちゃいました。

ほんとに衝撃的な本でした。
たぶん、生死について美しく歌い上げた「ぶたばあちゃん」がすばらしかったので、同じ作者の本なら間違いないという感じで、小学校にたくさん納品されたのではないかと思うのです。
でもこれは確かに大人向けの絵本って感じがしますよね。
キツネの羨望と嫉妬、それゆえの行動。
思わず目をそらせてしまいたくなる情念ですが、これも確かに人間の感情のひとつだと思うと、その悲しさに身が震えます。
なにか、とんでもない事件や災害が起きる度、人は必ずカメラの前で、
「こんな悲しいことはこれで最後にしてほしい」
なんて言いますけれど、時々私、それって本音かな、って思うのです。
みんなが同じ思いをすればいいんだって、
そうでなければ、私の気持ちなんて、きっとわかってもらえるはずがないって、内心思ってたりするんじゃないかなって。
キツネの感情は、あまりにも人の感情の最も深い、正直な本音の部分に寄り添いすぎていて、だからこそ、この絵本は読んだ人に衝撃をもたらすのでしょうね。
私は英語ができませんが、この絵本は翻訳に少し難があると評判なので、原書もちょっと読んでみたいです。③

セネシオ:Sさま、ね~、びっくりでしょ。Mさんに教えてもらってよかったですよね。なかなかこんな体験できるもんじゃありません。

いえね、おっしゃる通りだと思います。つまり
>ストーリーを最もいい形で表現できる方法が絵本だということもある
しかもこの作家✖画家のタッグが抜群で、私たちみんなやられちゃったんです。
作家のブルックスさん、南アフリカ出身というのが人生観になんか影響あるかな、なんて考えてもみます。
話が終わった時点で皆の注意がカササギに行きますね。

カササギ、あんた、どうすんの?って。カササギは悔いて力の及ぶ限り、もとの我が家へ帰ろうとします。一人で。カササギの自立ですよね。今まで自分では何もやってこなかったから。
何度も新しい目で読むのがいいですね。

Mさま:著者ブルックスさんの他のは読んだことがないんですが、キツネは「揺さぶりをかける」作品です。
>人の感情の最も深い、正直な本音の部分に寄り添い…
そう、そこを揺さぶるのです。
私はあまりに引きずったものだからさっきまた本を開いて、最後のページのカササギの表情を見てきて、ちょっと希望があるかな、なんて思っちゃった(笑)。私たちはそんな風に思いたいんですね。
ええ、翻訳はいつも問題ですね。

 

Sさま

(略。ごめんなさい、たくさん略してしまいました💦)
快晴の空。爽やかな顔をした群集。
人混みの中で考えるキツネの情念...
アリですね...(ニヤリ)
『みんなが同じ思いをすればいいんだ』
後ろめたくて正視できないこの感情を、どうしても認めざるを得ないこと...
マミーさんがおっしゃる『鏡の中の自分』
セネシオさんがおっしゃる『揺さぶられる』
読む者はみな、この残酷な道を通らされるのですね。私も本当にそのように感じました。

そしてこの感情の暴露を表現してくる人がいるという驚き。
キツネの感情そのものに背中が寒くなるのと同時に、
絵本に対するとき、教訓や寓意みたいなものを無意識に期待してしまう姿勢をもぶち壊されました。
この作者さんの生い立ちは一体...?と考えてしまいました。
色々な『スゴい』が渦巻いて、カササギの迷いを自分の日常の中に見つけてしまったり、犬おまえ気付けよ!って思ったり、キツネの誘惑を男女に例えてしまったりしたら...
『わーーっ!!』ってなりました...(T_T)④

セネシオ :>人混みの中で考えるキツネの情念

私もともにニヤリとします。
「感情の暴露」といっても、イヌやカササギの感情は至って当たり前、誰しもわかる感情です。

しかしキツネの感情は、心の奥底に蠢く暗い激情であり、正視しがたい。見なかったことにしてしまいたい。関りを持ちたくない。そう思ってしまいます。
>キツネの誘惑を男女に例えて…
おっしゃる通りです。一番わかりやすいんじゃないでしょうか。
>犬おまえ気付けよ!
私も同じことを考えた(笑)。その前に「カササギのばか、ばか、ばか!」です。

Rさま

Mさんのところから伺いました。

小さなミスで大切なものを失ってしまうことがある。永久に。
ここのところで、胸が締め付けられました。涙がうっすら。
本当にそう思います。
絶対に失いたくない大切なものは、誠実にきちんと向き合う必要があります。
一度失った信頼を取り戻すのは、正直難しいです。
いくら後悔しても、いくら泣いてもどうしようもありません。
切ないですね。
お日様の光が弱いからか、気持ちが沈みがちです。⑤

 Jさま

他の方も書いていますが、「絵本=子供向けの寓話」・・と言うステレオタイプを一発で打ち砕く、破壊力のある一冊です。
でも、この本を通じて著者の発するメッセージは「子供への問題提起」とは、考えられないでしょうか?
例えば、イジメ。 なぜイジメるのか? イジメられたらどんな思いか? キツネとカササギは、そのメタファーではないでしょうか?
大人にも、強烈なインパクトを与えますね! 例えばフィギュアスケート。 あと一人の滑走者を残して、自分が暫定3位だったとします。 3位の選手は、最終滑走者の演技を見ながら、
  「転べ、ミスをしろ。 そうすれば、私はメダリストだ!」
なんて思わないのでしょうか? 
まぁ、大人は間違っても、そんな事を口に出さないでしょう。 
が、著者が「大人への問題提起」もしたかったとすれば、それは、深層心理を含めた自分自身を内省するツールにして欲しかったのでしょう。

セネシオ:(略)イジメ、メタファー、深層心理、内省を促すツール…興味深いキーワードが出てきました。ありがとうございます。皆があの本を読んだ時点で、また取り上げたいと思います。次回(年内の予定)も「キツネ」です。

 

 

12月28日

Mさま

(略)実は娘が初めてこの絵本を読んだとき、しばらくどよーんとなってしまいました。
で言うのです。
「このキツネの気持ちもわかるな」って。
ついこの前まで赤ちゃんだったはずなのに、あなたの人生に一体何が?!とびっくりしてしまいました。ほほ。
初めはキツネの情念に目が眩み、イヌの純情さと鈍感さにイライラし、次にカササギの弱さに切なくなる・・・。これほど感情を揺さぶられる絵本はそうはないと思います。
セネシオさまの解説で、いっそう印象的になりました。
ちなみに私も結末にはほんの少し希望を感じました。
帰宅したカササギが、他のカササギと仲良くしているイヌを発見!なんていうのが本当の絶望かも・・・とか人の悪いことをちょっと想像したりしてたのは秘密です。

(略)

PCを通してですが、みなさまのご意見や感想を聞くことができて、本当に楽しかったです。
まるで本物のサロンのような。
なんて贅沢な時間だったことでしょう。⑦

 

Hさま

マーガレット・ワイルドの他の本は読んでいますが、この本は、気味がどうも・・・で
避けていました。
でも、様々な方々のレビューから、想う事が沢山ありました。
イジメは,亡くさないといけないです。
あえて亡くすと書きます。
カササギが、無事に犬の元に戻れる事を願います。

セネシオ:(略)本の衝撃も大きいのですが、みなさんの感想を聞いてまた本を開いて、時間をかけながら考えてみることができた― この点が大きな収穫だったと思います。というのもこの本が怖かったから。これまでに出会ったことのない類の絵本だったからです。

 

Sさま

「キツネ」は、2016年私が選ぶこの一冊大賞(私主催)を受賞しました。ちなみに「やまびと」と同時受賞です。
こんなふうにみなさんの感想を伺えるって、すごく楽しいですね...!
感想文を書くのともちょっと違うし、おしゃべりするのとも、ちょっと違う。
何度も読み返してしまいますね!
私にとって「キツネ」が特別と感じた理由は、その衝撃がストーリーそのものに留まらず、絵本の存在意義や自分の受け止め方にまで及び、さらには製作者の人生にまで興味が及んだこと。
たくさんの驚きが詰まっていたのです。
まったく予備知識なく読んだので、お話しと絵がそれぞれ別の人の手によっていることさえも、一つの驚きでした。あのストーリーにこの絵...こんなにぴったりくるものですか??
正直驚きを禁じえません。お互いを高め合うタッグなんだなあと、ここでも衝撃をうけた次第。どんだけゆさぶるのかと(笑)
お話の最後、私、あんまりいいイメージが浮かびませんでした。カササギが運良く犬の元に戻れたとして、以前のように幸せにはなれないんだろうなあ...と。
あ、(゜゜)それは私がこの本を完全に自分本位に読んでいるからかも。子供に読ませるという意識が全くなかった!!
あらびっくりです。

セネシオ:(略)絵本、恐るべし、ですね。子供の本じゃないです、アニメが子供専用でないのと同じですね。
カササギが戻れるかも疑問ですが、戻れたとして今後の人生ですか…う~~ん。
イヌは許してくれるでしょうが、以前と全く同じにはならないでしょうね。イヌの優しさが怖くなるでしょう。
あの二人、作家と挿絵画家の関係も興味深いです。こんなによく理解できる人間関係って稀有でしょう。奇跡のように思えますね。

 

12月29日 水の中のナイフ キツネ-3-

Shさま

イヌ(アンジェイ)が全く妻のことを信じ切っていたなら、展開しえなかった出来事。
もしくは彼に 自制心と品格があったなら やはりこうはならなかった。
この後、彼にとってはどちらにしても地獄ですね・・・・
妻の言うことを
信じても地獄。
信じなくても地獄。
キツネ(青年)はきっと、カササギ(スポーツ記者の妻)と目が合った瞬間から、
一瞬の恋を予感したのではないでしょうか?
ナイフを置いていっしょに出かけた時には、このストーリが出来上がっていたのではないでしょうか・・?

セネシオ: カササギはちょっと不眠気味で外(ヨットの上ですが)に出て外気を吸っていた。キツネは出発の日だから早く目が覚めたんですね。二人でお話をしていただけ。
なのにイヌはやきもちを焼いた。器の小さな男、でも至って普通の男です。普通の人間は欠点だらけなんですから。
成功してちょっと慢心している男。キツネの若さと美しさが急に気に障り出したんです。そうしたら妻がやけに親切にしている風に感じられたんですね。
夫婦間の隙間に、さっと風のごとくキツネが入りこみ、さざ波をたてていきました。

Mさま

(略)でもこんな映画があったとは!
「キツネ」を読んだ後にこのストーリーを読むとどうしても連想せずにはいられませんね。
戦場のピアニスト」の監督さんですか...。どんな映画だったのか...いつか見てみたいものです。

最初は優越感に浸っていたイヌ。
でも、即物的な成功の証、お金やヨットなんて、みずみずしい「若さ」の前では、輝きが鈍ってしまうものなのでしょうか。
イヌの方が嫉妬するなんて。
カササギは失望したことでしょう。
そんないじましいイヌの姿に。
キツネによろめいちゃっても仕方ないかなあ…なーんて思ってはいけませんね。
この映画の場合、キツネにより強く魅せられてしまったのはイヌの方なのかも。
そんな気がしました。⑪

 

セネシオ :この三人、おもしろいですよね。いろいろな解釈を残しており、監督は若いのにすごいなと思っています。

映画を見ると、始めのほうは話がなかなか進まないように思えて、どこへ連れていくんだろう、と先回りしていろいろ予測して考えてみるのです。最後の20分でどどっと動きます。
私が筋を言ってしまってすみません。でも伏線もありまして、なかなか複雑なんです。イヌはやはり嫉妬しないとおもしろくないでしょうね。即物的な成功では満たされないものってありますもんね。

 

Jさま

う~ん、人間の持つ優越感やそれに対する嫉妬心、猜疑心を寓話で見事に表現しています。
人生に成功し、ヨットを得、美しいカササギを妻に迎えたイヌ。 しかし、若さや美しさでは到底イケメンのキツネには敵わない。 
そんな3匹がヨットと言う隔離された密室で一晩過ごしたらどうなるのか? 結果は、本文にありました。
若いキツネにカササギが心を惹かれたと誤解したイヌの、キツネに対する仕打ち・・
まさかイヌがそんな醜い心を持っているとは思っても見なかったカササギ。 
  「ああ、あれが夫の本心なのね!」
と思った事でしょう。 水中に落ちたキツネを真っ先に助けに行くカササギと、そんな妻の行動に戸惑いながらも、錨を降ろすイヌが印象的でした。
 ⑫

セネシオ:人生の師匠とお呼びしてもよいですね。よくぞ映画の本質をまとめてくださいました。キツネという異物によって、夫婦はお互いの心の奥を覗いたわけですが、最後は(描かれていないけれど)もとのさやにおさまって、平穏な暮らしを続けていくのだろうと思います。夫婦とはそんなもんです。
普遍的なテーマですが、あの若きポランスキーは見事にさばいてみせました。あれから彼の映画界における進撃が始まるのですね。しかしポランスキーさん、いつもお騒がせな話題に事欠きませんけれども。

Jさま

まぁ、夫婦は今まで通りの平穏な暮らしを続けて行くとは思いますが、カササギはイヌに対して、
  「(本当は、あんな人だったのね!)」
と不信感を持ち、イヌはカササギに対して、
  「(そうか、若い男と見ると直ぐに心を動かす、尻軽女だったのか!)」
と軽蔑心を持ち続けるでしょう。
そんなイヌは、「美しい妻を持つ」事を同僚等から言われる事をステイタスと思い、カササギは今の生活レベルを落としたくないと思い、両者は何事もなかった様に「仮面夫婦」を続けて行くのでしょう。
  「どうして? ねぇ、どうして?」
と不思議に思う子供達に対し、
  「それが、『大人』っていうのさ」
としか答えられない大人達 ・・ きっと、作者はそんなメッセージ(=格好良く言えば清濁併せ呑む事が出来るのが「大人」である)を伝えたかったのかも知れませんね? 

セネシオ:(略)夫はごく普通の人間で、悪い人じゃないです。若造に自分らの生活を見せびらかしたかった。反応を見つつ優越感に浸っていたらちょっと度を越してしまったんです。さっきまで威張っていたのに今度は恐ろしくなって、おろおろする。
妻の言うことが信じられない。自分のために嘘をついているのだと思ってしまいます。最後はopen ending
妻のほうは、夫を罰するために、若いキツネを誘惑したんでしょう。これで自分の中の怒りはおさまったのでもう十分です。

Nさま

おじゃまします。ご紹介くださった絵本と映画、意外でしたがとても共通点がありますね。
ロマン・ポランスキーは「戦場のピアニスト」「死と処女」「赤い航路」を観て、ほかの作品もぜひ観たいと思っていました。「水の中のナイフ」絶対観ます!
憧れと嫉妬という感情を描いた男女の映画、というとわたしは「太陽がいっぱい」「道」「華麗なるギャツビー」を思い出します。それぞれの映画の「キツネ」を考えるのも楽しい連想でした。
素敵な記事をありがとうございます。⑭

セネシオ :(Nさまへ)「太陽がいっぱい」を出してくれて感激です。私もいろいろ共通点が多いと思っています。
「水の中のナイフ」はメイキング映像がついているのがいいそうですよ。私はDVDは見てないんですが。
社会主義国だったポーランドでは映画一本撮るのは大変でした。検閲で削られたり却下されたりです。若きポランスキーはその辺をうまくやって、映画を無事世界に送り出しました。西洋世界で絶賛され、その後はご存じのとおり成功を重ねました。
私はこの映画を見た翌年1980年、ポーランドへ旅行しました。一人の貧乏旅です。「連帯」運動とリンクして、アンジェイ・ワイダの映画が世界的に大きな話題になっていた頃です。

 

おわり

 

キツネ画像

f:id:cenecio:20170412095903j:plain

 

 

f:id:cenecio:20170412095948j:plain f:id:cenecio:20170412095925j:plain

https://s-media-cache-ak0.pinimg.com/236x/7b/d7/6a/7bd76a305ea95af03b9430b44bfd531f.jpg https://s-media-cache-ak0.pinimg.com/236x/fc/ed/53/fced53f591c806c660a6306567f0b528.jpg

 https://s-media-cache-ak0.pinimg.com/236x/c3/c0/17/c3c01786b3184ba9d13fc3564a72a55c.jpg https://s-media-cache-ak0.pinimg.com/564x/cd/da/50/cdda504f27670cb0ba36be77db726a2e.jpg

 

みなさん、ありがとうございました。


 

水の中のナイフ キツネ-3-  追記:ポーランド映画祭のパンフ

イヌとカササギの物語

 

キツネを拾う

イヌ(アンジェイ)とカササギ(クリスティーナ)は週末を湖ですごすために、車を走らせている。途中ヒッチハイクの若き青年、キツネを乗せてやる。キツネは普段乗せてもらうトラックが週末は走らないため困っていた。

イヌは湖にヨットを所有している。成功したスポーツ記者で、若く美しい妻と裕福な暮らしを送っている。気紛れからキツネをヨットクルージングに誘う。一晩ヨットで一緒に過ごし、キツネは翌朝発つということに決まった。

 

密室の三人

イヌとカササギ夫妻はキツネに親切だ。イヌはヨットに精通しており、操縦の基本をキツネに教えるが、どことなく尊大な命令口調であるのは否めない。キツネの未熟さ、性急さ、素朴、無知、粗削りなところを見ては優越感に浸るイヌ。

カササギは落ち着いた肉感的な女性で、忠実な妻でありキツネにも優しい。

キツネもクルージングを満喫している様子。ただ、泳げないからと言って水には入らないが。食事や酒を楽しみ、船乗りがよくやるという、棒を一本ずつ抜いていくゲームをして夜のひとときを過ごす。

キツネはナイフを持っている。折りたたみ式の美しいナイフ。宝物のように大切にしている。森の中など徒歩で移動するには、藪を開いたり、ものを切ったりするのに不可欠なものだ。キツネはナイフゲーム(*)をしてみせる。広げた指の間を次々に高速で刺していく遊びだ。

ナイフは話の中で何度も登場する小道具で、不安と緊張と暗示をもたらす。

Knife game - Wikipedia

 

ドラマ

朝まだきの湖畔。カササギはヨットの上に出て座っている。キツネも目が覚めてそこへ出てきた。しばし言葉をかわす二人。

遅れて目が覚めたイヌは二人がいないことに気づく。ナイフが見える。それを隠す。

それから外で二人と合流する。イヌの心にさざ波がたつ。気に入らないのだ。なんで妻と二人でいる?小ばかにしやがって。ボスは俺だぞ。メンツ丸つぶれだ。怒りと嫉妬が膨らむ。

キツネに甲板掃除を言いつける。キツネは戸惑いながらも従う。急に主人面をしてキツネを顎で使い始めたイヌに対し、カササギは反発する。

キツネがヨットを降りるときが来た。しかしナイフがない。ナイフを返してくれとイヌに言う。イヌは嘲るようにポケットから取り出し、笑いながら取ってみろと挑発する。カササギはイヌの子供じみた意地悪な仕打ちに腹をたてている。

ナイフが手から落ちて水の中へ。なじるキツネ。高笑いするイヌ。キツネがイヌになぐりかかる。が、イヌのパンチを受けてキツネは湖にどぼんと落ちてしまう。

キツネは泳げないのだ。カササギは心配する。二人で水に飛び込んで探すが、キツネを見つけることはできなかった。ヨットに戻った二人は一気に感情を爆発させる。これまでのマンネリ化した穏やかさはどこへ。カササギは一気に批判や不満を吐露する。特にイヌが、どうせこのまま隠しても誰にもわからないだろう、と言い、キツネの手荷物を水に放り投げようとしたときは…。

結局イヌは警察に連絡することにし、岸まで泳ぎ出した。その一部始終をブイにつかまって見ていたキツネは、悠然と泳いでヨットに戻る。そう、泳げたのだ。

カササギはキツネの頬をたたく。その後、二人のやりとりを通して、キツネの身上と、かつては貧しく苦労したイヌとカササギの過去が明らかになる。

どちらからともなく唇を重ねる二人。そうして二人で船室へ。

 

イヌ

カササギはヨットを岸辺につけ、そこでキツネを降ろし、すぐさまイヌが待つ桟橋へ向かう。イヌは泳ぎ着いてそこで待っていた。裸では警察に行けないから。

車を走らせると、目の前に「警察署」の案内板が見えてきた。カササギはUターンして、とイヌに言う。

ーキツネは生きていたの。ちゃんと泳げたのよ。彼が戻ってきてから、一緒にあなたの名前を大声で呼んだけど届かなかった。わたし、浮気したわ。

カササギの言葉を信じないイヌ。

ー君の言葉を信じて家にもどり、明日、新聞を開くと「若者の水死体が…」という記事を見るんじゃないか。

本当の話だといっても、なかなかイヌは信じようとしない。イヌは警察に行くのか、行かないのか…わからないまま、この話は終わる。

「margaret wild fox」の画像検索結果

http://readingaustralia.com.au/lesson/fox/

 

マミーさん、shellさんのコメントを読んで、思い出しました。これは映画『水の中のナイフ』です。登場人物はたったの三人。場所は湖のヨット。密室ならぬ密船劇です。

サスペンスと画像の美しさ。30年くらい前に「ポーランド映画祭」で見たのですが、今も忘れられません。

 

『水の中のナイフ』(Nóż w wodzie):ロマン・ポランスキー監督・脚本による1962年ポーランド映画ポランスキー監督の衝撃デビュー作品。アカデミー外国語映画賞ノミネート。波瀾万丈の人生はこちらで。

ロマン・ポランスキー - Wikipedia

 

写真を載せておきます。

f:id:cenecio:20161229104818j:plainf:id:cenecio:20161229104830p:plain

Nóż w wodzie (1961). Roman Polański – Toster Pandory

http://szczere-recenzje.blog.onet.pl/2011/04/17/146-noz-w-wodzie-knife-in-the-water-1961/

f:id:cenecio:20161229104840j:plain

f:id:cenecio:20161229105157p:plainf:id:cenecio:20161229105212p:plain

http://film.onet.pl/noz-w-wodzie

f:id:cenecio:20161229105445p:plain

ロケ地の湖、現在の様子。ウィキペデアから。

 

終わり

 

追記:2017年1月

ポーランド 映画祭パンフレット

片づけをしていたら見つかりました。とってあるとは思っていなかったので感激しました。

f:id:cenecio:20170104114106j:plain

上の写真

右:1979年

左:1981年

 

下の写真

『水の中のナイフ』解説

f:id:cenecio:20170104114110j:plain

キツネ再び マーガレット ワイルド&ロン ブルックス

あれから2週間がたち、もう一度『キツネ』について。

 キツネ Fox (Margaret Wild & Ron Brooks) - 子供の領分 Le Coin des enfants

 

キツネ 大型本 – 2001/10
マーガレット ワイルド (著), ロン ブルックス (イラスト)

出版社: BL出版 (2001/10)

 

動物が擬人化されているところは、ちょっと「イソップ物語」や「ラ・フォンテーヌ寓話」を連想させるが、教訓めいたところはない。open endingというのか、読者の解釈の自由に任されているところは大きな特徴だと思う。そして付け加えるなら、happy endingでは全然ない。

 

絵本であること

f:id:cenecio:20161228160343p:plain

Look! A New Exhibition on Illustrated Books — The Wheeler Centre

 

みなさんのコメントおよび、マミーさんのブログ記事、shellさんの数回にわたる「キツネ考」を読ませていただき、大変参考になった。お礼を言いたい。

これはまず絵本なので、「作家さんにとって、子供向けとか大人向けとか関係なく、ストーリーを最もいい形で表現できる方法が絵本…」という志月さんの指摘から始めるべきだろう。

『キツネ』はタスマニア在住のRon Brooksによって描かれるべき絵本であった。オーストラリアの山火事や荒れ地、自然の過酷さや美しさなど、あの地で生きている者にしか表現できないものがあると思う。

そのうえでBrooksは、作家Margaret Wildのメッセージを受け取り、作品世界を作り出すのであるが、その強烈な個性といったら…。手書きの異様な文字はもちろんのこと、どのページも私たちの目を引き付け、逸らすことを許さないのだ。

色はなんといってもキツネの赤(オレンジというべきか)、そして補色となる美しい青が印象的で、そのあと茶系統や灰色も背景として見事におさまっている。

キツネは肢体の美を誇るかのように、横に縦に大きく長く描かれる。表紙もしかり。(前回の記事の写真参照)。豊かなふさふさの艶やかなファー。完璧な容姿に見惚れるばかりだ。森林火災から逃げのびてきたイヌやカササギと違って、キツネの外見には何一つ「傷」がない。外見には。

イヌとカササギー この組み合わせは意外であるが、両方ともケガを負い、ハンディキャップを持つという共通項がある。片目イヌと飛べないカササギ

しかし互いに補完し助け合って友情を育み、しあわせな日々を送っていた。お互いがなくてはならない存在であるから、絆も健常の者同士より強いのではないだろうか。

季節は夏から冬へ、そして春が来たころ、キツネが登場する。目をギラギラさせて、赤いファーをまとっている謎めいたキツネ。

ネットで原文を読んでみると

・・・flickers through the trees like a tongue of fire

 

木々の間から赤い体がチラチラと見え隠れしている。それはまるで「火の舌」のようだとある。不気味だが美しい比喩だ。重大なドラマが起きることを読者に予感させる。西洋ではふつう、キツネのイメージは大変悪く、悪や狡猾の象徴であることが多いからだ。

 

f:id:cenecio:20161228181315p:plain

しかしイヌは警戒もせず温かく受け入れる。

ステレオタイプではあるが、犬はここでは疑いを知らぬ「善良」そのものとして描かれる。当初カササギを手厚く介抱してやり、心の傷も癒してやったイヌ。献身や心の優しさは賞賛すべき資質だ。しかし愛する者を守るには、優しさだけではだめなんだということも私たちはここで学ぶ。

カササギは危険を察知する敏感さを持っていた。五感を使って感じ取るのだが、その毒にも気づいており、不安になる。

・・・fill the cave a smell of rage and envy and loneliness

 

 洞穴を満たす怒り、妬み、そして孤独。

孤独なキツネにとって、イヌとカササギの友情は我慢ならない。見ているだけで腹がたつ。なんで奴らだけ幸せなのだ!

 

マミーさんが書いている。

キツネの羨望と嫉妬、それゆえの行動。
思わず目をそらせてしまいたくなる情念ですが、これも確かに人間の感情のひとつだと思うと、その悲しさに身が震えます。

焼けるような、あのオーストラリアの野火の如き、燃えるような「羨望と嫉妬」なのである。これを鎮めるにはカササギの最も弱い部分を攻めるしかない。キツネに愛はない。言葉巧みに誘う。自分の手管に自信もあるだろう。

カササギは欲に負けてしまった。イヌの背に乗って走っているとき、こんなのは、飛ぶことじゃない、と思ってしまう。わたしは飛びたいのだ。かつて羽があったときみたいに。残酷ではあるが、みすぼらしい片目イヌと美しいキツネとを比べてもみただろうか。

イヌを裏切り、友情と幸せの日々を捨てた代償は大きかった。つまりイヌの待つ洞穴に、生きて無事帰れるかわからないほど遠くまで来てしまったからだ。後悔してなんとか贖いたいと思うカササギだが。(open ending)

  

Jさまはこのように書いている。

他の方も書いていますが、「絵本=子供向けの寓話」・・と言うステレオタイプを一発で打ち砕く、破壊力のある一冊です。

でも、この本を通じて著者の発するメッセージは「子供への問題提起」とは、考えられないでしょうか?

例えば、イジメ。 なぜイジメるのか? イジメられたらどんな思いか? キツネとカササギは、そのメタファーではないでしょうか?

 おっしゃる通り、「問題提起」は子供の年齢に応じて、そして私たち大人にも広く投げかけられている。イジメ問題はよい例である。

J.パーキンソン (id:PSP-PAGF)

Jさま、ありがとうございました。

 

私は何度もこの本を読み返してみて、子供には8歳くらいからが適切かなと思っている。人は心の闇、深いところに潜む悪意を持っているのだ。私たちの心にキツネはいると思う。そのことを子供と率直に話してみたらいいと思う。

 

この話から学ぶこと

この三角関係にもう一つ「猜疑心」(さしずめイヌの役柄)が加わったら、シェイクスピアの悲劇になるのかもしれない。人間のもつ本質的な感情ー 愛、嫉妬、裏切り、後悔、欲望、猜疑などはドラマのエッセンスであるから。

とはいってもこの話はそんな悲壮なものではなく、最後はわずかだが希望を残している。結局のところ、キツネの話ではなく、カササギの話だった。刺激や新奇なものに心惹かれたカササギ。イヌとの生活に少し退屈してだろうか。仮初めの喜び、それは偽りの喜びだった。大切なもの、イヌとの友情を裏切ってしまった。そしてやっと自分にとって本当に大切なものがわかったのである。高くついたレッスンであるが、私たちはカササギの帰宅を祈り、喜ぶイヌの顔を心に描こう。

 

新しい寓話・現代の寓話『キツネ』

終わります。

 

 著者についてはこちら(英語)

alchetron.com

アン・モーティマーの世界~クリスマスの絵本~

わたしね、白状すると、可愛いものが大好き!

小さくて可愛くて色がきれいなもの。

みなさんだってこどもの頃、自分の気に入ったものを集めたり切り抜いたりして、宝物として、箱や机の引き出しにしまっておいたのでは?私にとっては絵本だって同じ。

でも今は恥ずかしいのでそういう趣味を隠して、オトナのふりをしていますけど。

ゆうべ、さぴこさんの記事を読んだら、そんな子供時代の楽しい記憶がさーっと、波が打ち寄せるように体の中に広がってきました。

 

さぴこさんの記事はこちら。

sapic.hatenablog.com

さぴこさんはもう、何というエネルギーでしょうね。9000字の記事ですから(@_@)

15冊の本に関しては、私は半分くらいしか知らなくて、いずれ他も読んでみたいと思います。

 

今日取り上げるのは

13 こねこのみつけたクリスマス

14 ちいさなねずみのクリスマス

さぴこさん、なんてことを!

よりによって、アン・モーティマーのねずみねこの本をダブルで選ぶなんて!

悶絶死する人が出たらどうするんでしょう。

 

画像お借りします。

f:id:cenecio:20161220151955p:plainほるぷ出版

 

f:id:cenecio:20161220152016p:plain徳間書店

 

挿絵を描いた人 アン・モーティマー(Anne Mortimer)

f:id:cenecio:20161220154456p:plain

Anne Mortimer

イギリス・サマセット在住。王立細密画家協会会員で、野生植物や花の絵が専門とのこと。グリーティングカードやカレンダーの挿絵などでも有名です。

絵本は猫の一連の本が大人気で、猫を描かせたら右に出る人はそういないと言われているそうです。

ほかの本の例です。

f:id:cenecio:20161220154306p:plain

13 こねこのみつけたクリスマス

子猫が五感を使って、冬の情景とクリスマスという一大イベントを経験する話です。

もう読んでもらう以外にはありません。解説するのは野暮なんですね。

猫の髭や毛の一本一本まで細かく描かれています。表情や肢体など、猫を本当によく観察しています。子猫の好奇心や興奮がよく伝わってきます。

 

f:id:cenecio:20161220165602j:plain

f:id:cenecio:20161220165639j:plain

おもしろいのは、左頁だけにお話が書いてあるんですが、あたかも一枚の絵の中央部分に柱状のテキストボックスを入れたようにしてあること。

 

お話を書いたのはかの有名なマーガレット・ワイズ・ブラウン(Margaret Wise Brown 1910 - 1952、アメリカ)です。

f:id:cenecio:20161220170409p:plain

「お話」と書いてしまいましたが、むしろ詩のような感じで、これをブラウンは「幕間劇」(インタールード)と呼んでいるそうです。

そして半世紀もあとに、アン・モーティマーによってすばらしい挿絵がつけられ、もっと豊かさを増した本は、この時期に子供たちの手から手へと渡るのです。

 

私がここで思い出すのは、やはり同じイギリス人のこの作家。

フランス語版を持っているのです。短いメモ的な記事です。

cenecio.hateblo.jp

 

14 ちいさなねずみのクリスマス

表紙を開くとこれです。

わあ、可愛い!なにしてんの?と子供たちが一斉に声をあげるところです。

f:id:cenecio:20161220173423j:plain

 

いや、表紙からしてもうワクワクしてました。

さっきの猫は人間と一緒だけど、ねずみはそうじゃないみたいだ、と子供たちは予感するのです。

 

人間の家に住んでいるねずみたち。人間のいないクリスマスイブの日、まるで人間がするみたいにクリスマスを楽しみます。

主人公はさっきのステキな王冠をかぶった子です。

この子が大はしゃぎなんですが、

f:id:cenecio:20161220171644j:plain

小鳥のお客さんをちゃんともてなしたり、

 

たくさんあるご馳走に迷ったり、

 

f:id:cenecio:20161220171734j:plain

 

仲間とクリスマスの歌を合唱したり。

 

するとシャン シャン とそりの音が空に聞こえます。

 

 

f:id:cenecio:20161220172157j:plain

ねずみもちゃんとサンタさんからプレゼントをもらいました。

中身は?

もちろん教えるわけにはいきません。

ご自分で確かめてくださいね。

(絵本はここで終わりです)

 

ねずみ好き

我が家はハムスターをたくさん飼っていたので、ねずみが大好きです。

1994-95年フランスへ家族で行く時は、一匹ずつしっかりしたお宅を選んで里子に出しました。

その当時の写真をお見せします。

f:id:cenecio:20161220175821j:plainf:id:cenecio:20161220180031j:plain

f:id:cenecio:20170407132835p:plain

f:id:cenecio:20161220175841j:plain

 

 

これはとても気に入っている写真です。

 

f:id:cenecio:20161220175847j:plain

ふつう食べ物はいったん頬袋に詰めるはずなのに、この子はこたつにでも入っている感じで寛いで豆を齧っています。

 

おしらせ

読者が増えたので、はてなスターとコメント欄、復活しました。

次回は「キツネ」の続きをやります。

みなさん、前回はコメント欄で熱く熱く語ってくれてありがとうございました。

Jさままで飛び入りしてくださいました。みなさんのコメント、一度目を通しておいていただけるとありがたいです。

ではまた。

キツネ  Fox (Margaret Wild & Ron Brooks)  

キツネ

マミーさんから教えてもらった絵本です。

前回『きつねのかみさま』を扱ったので。

本当に教えてもらえてよかった。自分では絶対にたどり着けなかったから。

私の絵本との出会いは幾分受動的ですが、それでいいんだと思っています。

f:id:cenecio:20161212135445p:plainf:id:cenecio:20161212141606j:plain

2004年出版のオーストラリアの絵本です。

イラストのRon Brooksにはやられたなあ。ガツンと頭を一発叩かれたような。しかも年末にこの衝撃ですよ。いやあ、参った!

絵も手書きの文字も凄かった。異様な手書きの文字がただ事ではない雰囲気を醸し出し、ザラザラとした気持ちで読み進むことになります。

 

表と裏の表紙いっぱいの赤いキツネ(上記)、こっちをじっと見ている。後ろには荒れ野が広がっていますが、色調が暖色のせいで特に寂しい感じは受けないです。ええ、今のところは…。残念ながらストーリーにはどうしても触れてしまいますね。

 

おはなしは・・・

f:id:cenecio:20161212145917p:plain

https://s-media-cache-ak0.pinimg.com/originals/3e/d5/ad/3ed5adcb1f712c87040ef2345a90e1ad.png

イヌは、森が焼けてケガをして飛べないカササギを口にくわえ、

介抱してやろうとねぐらの洞穴まで運んできます。

カササギは、余計なお世話だ、自分はどうせ飛べない、と言います。

するとイヌは、自分も片目が見えないんだと答えます。

一緒に暮らすうちに互いがかけがえのない存在になっていきます。

カササギはイヌの背中に乗って林や茂みを駆け回ります。カササギはイヌの目になり、イヌはカササギの「羽」になるというわけです。

 

f:id:cenecio:20161212162931j:plain

月日が流れ、冬が過ぎ、春になったころ、一匹のキツネが現れます。

カササギは不気味さを感じ取るのですが、イヌは一緒に暮らそうと迎え入れるのでした。

キツネの体、すごいですね。まるで通せん坊するみたいな、暗示めいた描き方でうなりました。

 

f:id:cenecio:20161212155245p:plain

カササギはキツネを警戒し、その目を恐れます。(ここだけ原書のページを借りています)

夜になるとキツネの匂いが洞穴いっぱいに広がります。

怒りと妬みと孤独の匂いが。(訳)

rage, envy, loneliness!

ところがイヌはちっとも危険を感じておらず、カササギの忠告にも耳を貸しません。

キツネはカササギを誘います。自分はイヌより速く走れる、まるで「飛ぶ」みたいに。

三度目でカササギは折れてしまい、キツネの背に乗り林を駆け抜け、これこそ飛ぶことだ、と有頂天です。

森を抜け、赤い砂漠まで来ました。するとキツネはカササギを振るい落とし、言い放ちます。

おまえもイヌも、ひとりぼっちがどういうものか、わかるだろう、と。

f:id:cenecio:20161212163357j:plain

 

さっきのキツネと肢体が似ていますが、目は冷たく光っています。

 

 カササギは打ち砕かれた思いで、ここで死んでしまいたい気分です。

しかしイヌが目覚めたらなんと思うだろう、自分がいないことに気づいたら…。

カササギは立ち上がり、遥か遠くのわがや、洞穴目指して一歩一歩進んでいくのでした。

(ここで終わります)

 

写真は10周年記念版。

f:id:cenecio:20161212141520p:plain

An Illustrated Guide: Fox written by Margaret Wild, illustrated by...

 

絵本ですから子供も読みますよね。子供向けの本ではふつう、人は間違ってもいい、失敗してもやり直せる、と前向きなメッセージを送るものです。

しかし私たち大人は、小さなミスで大切なものを失ってしまうことがある、しかも永久に。人間関係のちょっとしたほころびで、悲劇や不幸のどん底に…ということだってあるとわかっています。人との関係はとても脆弱で、しばしば悪意やネガティブな力の方が優位にたつことを教わってきました。

キツネは皆がなかよく幸せになるのとは対極の、皆を自分とおなじくらい孤独で寒々とした生活に追いやり、嫉妬心を鎮め、満足感や支配する喜びを得るのです。まるでサイコパスですね。

カササギがイヌのもとへたどり着けるか、子供たちと話し合ってみるとおもしろいでしょうね。

 

本の作者

Ron Brooks

絵本画家、絵本作家、イラストレーター、(オ-ストラリア在住)

f:id:cenecio:20161212145747p:plain

https://www.youtube.com/watch?v=bJycrXNsGjs

 

Margaret Wild (南ア生まれ、オーストラリア在住)

http://www.thelitcentre.org.au/author/margaret-wild

f:id:cenecio:20161212164704p:plainMargaret Wild

f:id:cenecio:20161212164741p:plain

f:id:cenecio:20161218164249p:plain

 

きつねのかみさま  あまん きみこ ・酒井 駒子

女の子の名前はりえちゃんです。

 

f:id:cenecio:20161116162435p:plain

きつねのかみさま (絵本・いつでもいっしょ) 大型本 – 2003/12

(イラスト) ポプラ社

 
りえと弟は、きつねの子たちとなわとびをして遊びました。それはりえのなわとびなのに、きつねの子は神様がくれたというのです。
★2004年度日本絵本賞
★2004年度青少年読書感想文全国コンクール課題図書

<小学校低学年の部>
★全国学校図書館協議会第27回選定「よい絵本」

 

 

絵を描く人が 酒井 駒子 だと聞いただけでワクワクなのに、お話があまんきみこ、だなんて!二人でどんな世界を作り上げるんだろうなあと思って本を開きます。

 

その前に「きつね」

みなさんにとって、きつねはどんなイメージ?

私は動物も昆虫も鳥も何でも好きだけど、きつねは特に好き。顔の造作や、内気そうな目がいい。毛の色もきれい。あ、そうだ、白い毛のきつねもいたんだっけ。

ともかく好き。

でも一般にはネガティブなイメージ、ずる賢くて「悪玉」と性格づけがされていますね。とりわけヨーロッパでは超ワルモノ扱いです。民話や昔話の中でね。

 

でもベビーメタル(BABYMETAL)のおかげで、少しは挽回したかな。

ベビーメタルはヨーロッパでもアメリカでも圧倒的人気を誇るんです。2015年のツアーは、ベルギーには来なかったけれど、ラジオのニュースではその熱狂ぶりを伝えていた。

f:id:cenecio:20161116163843p:plain

f:id:cenecio:20161117130052p:plain

http://ticket.st/livel/4416vi2tr

 

さて、やっとおはなしに入ります。

 

りえちゃんが言います。

おやつを たべおわったとき、あたし、なわとびのひもを わすれたことをおもいだした。

このように、絵本としてはかなり珍しいといえる、女の子の独白で物語がかたられるのです。あまんさん、やってくれますねえ。

なわとびの縄を公園に忘れたことに気づいて、取りにいく。弟のけんちゃんもついてくる。木の低い枝にひょいとかけたはずなのに、おかしいな、どこにもない。すると声が聞こえてくる。にぎやかな笑い声や歌声が。

おおなみ こなみ ぐるっと まわって きつねの め。

するときつねたちがなわとびをしているのが見えた。

こっそり見ている。

f:id:cenecio:20161116164959p:plain

声を出してしまい、きつねたちに見つかったので「こんにちは」とあいさつする。

するときつねたちは、いっしょに遊ぼう、と誘ってくれた。

f:id:cenecio:20161116165341p:plain

 

楽しく遊んでいたとき、ふと持ち手をみたら「りえ」と名前が書いてあるではないか。なあんだ、あたしのだった、と安心するりえちゃん。

ところが帰る時間になって、ちいさい子ぎつねがこう言うのだ。

「それ、あたしのよ。さっき みんなで なわとびしたいって、きつねのかみさまに おいのりしながら あるいていたら、こうえんの きのえだにかけてあったの。あたしのなまえまで かいてあるの。ほらね。」

 

「え、あんた、りえちゃんなの?」

 

あたし、びっくりした。

女の子は自分の縄を 持ち帰ることをあきらめ、さよならを言って家路につく。

そのとき弟のけんちゃんが高い声でいった。

 

「そうかあ。おねえちゃんは、きつねのかみさまだあ。くくくっ」

 

というお話でした。あまんきみこさんらしい終わり方でした。

私は大人なので、お話より絵の方を隅々まで味わいます。 

f:id:cenecio:20161116170910j:plain

ふたりが同じ名前、その前にきつねにも名前があるなんてすてきです。考えてもみませんでした。そしてきつねがこんなにも笑うんだ、ということもね。

 

作家 阿萬紀美子(あまんきみこ)1931年8月13日 生まれ。

f:id:cenecio:20161116171828p:plain

作品は大変に多く、小学校の教科書にも載っています。「ちいちゃんのかげおくり」「おにたのぼうし」「白いぼうし(『車のいろは空のいろ』シリーズの一篇)」などが有名です。

私の母は年齢が同じこともあって、大ファンです。きっかけは15年位前だったか、ラジオ番組であまんさんの作品世界の紹介を聞いたこと。そのあと「あまんきみこの本、あるだけ買ってきて」などと電話をかけてきたことがあります。

 

 

酒井 駒子さんは一度取り上げました。

cenecio.hateblo.jp

  おわり

 

追記:すごいブロガーさんがいます。酒井駒子研究。

http://blaine.org/sevenimpossiblethings/?p=2402

 

f:id:cenecio:20161231114800p:plain

 

f:id:cenecio:20161231114959p:plainf:id:cenecio:20161231115027p:plain

 

みんな~!!(訂正:12月19日)

こんにちは、みなさん!

今日は本の話ではなく、ちょっとお話したいこと。

 

二カ月も更新しないと、まず一か月目にはてなさんからメールがきます。「そろそろ記事を書きませんか。何でもいいですよ」といって、こんなお題はいかが、と提案してくれます。親切にありがとうございます。

しかし、このブログは我が家にある絵本・児童書の一覧であって、いずれこのまま子供たちに渡すつもりなんです。そして結婚して子供が生まれたら「どれどれ、どんな本がうちにあるかな。どんな本を読んでもらったかな」と捜せるように。ほしい本は買ったり借りたりして、もし本人にやる気があるなら、このブログを継いでもらうこともできるし…。そんな壮大な(?)ことを考えて、これまでメモのように書きつけてきました。

ですが、忙しくなると、メインのブログだけで手いっぱいで、旅行などすると時間も本当になくなるので、なかなか難しいですね。みなさんもそうじゃありませんか。

まあ、今後もマイペースで行くのですが、みなさまにお知らせとして申し上げたいことは、☆ボタン、コメント欄を外したということです。今まで本当にありがとう。これからはどうぞお気遣いなくね。

…って、そうじゃないでしょ!これからもみなさんのブログは訪問させてもらうので、またよろしくお願いしますね。

 

f:id:cenecio:20161113155935j:plain

11月11日は酉の市でした。浅草へ行ってきました。

 

f:id:cenecio:20161113160106j:plain

写真中央:ヒラリーとトランプ両氏の熊手がありました。

 

f:id:cenecio:20161113160344j:plain

 

私もみなさんのしあわせをいつも祈っています。

 

新しい生活を始める人、悩みや問題を抱えている人、先行きの不安な人・・・みんな、心から応援しています。思い切って前に一歩踏み出したほうがいいよね。あとで後悔するよりは。

 

このブログを始めておもしろいと思ったことをいくつか書いてみますね。

ここには95%以上の比率でgoogleか yahoo検索でやってきます。どの記事に来るかを見るのは興味深いことだし、記事を一本も書いていない、ここ二カ月の間にも、毎日訪問があるというのもおもしろいです。

 

毎日、幾度も参照される記事は、5月に書いたこの記事です。

 

cenecio.hateblo.jp

LPレコードをどこにやったか、今でもわからなくて残念です。再度聴いて、感想も載せようと思ったのですが。絵本のすばらしさ、高中正義のファンの多さを物語ると思います。

 

cenecio.hateblo.jp

「かさ」という絵本の記事に、ある日、集中的にアクセスがありました。なぜだろう、と調べてみたら、作家の太田大八さんが亡くなったのでした。8月2日のことでした。

間一髪で広島原爆を免れた人で、翌日惨状を目にしたそうです。「子どもの本・九条の会」の代表も務めていました。

f:id:cenecio:20161113164951p:plain

続きは下の絵本学会サイトで。

http://www.ehongakkai.com/cn10/cn17/pg356.html

 

ほかにもいろいろあるんですが、最後にひとつだけ。

訪問してくれる人の国籍がさまざまだということ。このブログのカテゴリーにある国々の人たちですね。

たとえばハンガリー人は「日本人がラチのことを書いているぞ。ちょっとのぞいてやろう」と思っているのです。

cenecio.hateblo.jp

 

日本語のブログなのにどうしてか。

それは私にはよくわかります。画像検索を利用しているのです。私も翻訳などで調べ物をするとき、ものによってはまず画像を見ます。文章を読むより捜しているものにピンポイントで当たることが多いです。それからそのサイトへいって記事を読んでいます。

以前、オランダの銀食器メーカー(建物が指定文化財)を調べていたときのことです。内部のようすが知りたくて見ていたら、写真が三枚も見つかり、とても参考になりました。その建物を修復工事した企業のHP内に入りこんでいて、before&after的な写真を載せているページに当たったわけです。

画像検索とgooglemapにはどれだけ助けられているか、わからないほどです。

 

ではきょうはこの辺でね。

次回は絵本をやります。

今日もありがとうございました。

 

(訂正:12月19日)

このメモみたいなブログに「読者さん」がいること自体不思議なんですが、最近増えたようなので、はてなスターとコメント欄を復活させました。

今後ともよろしくお願いいたします。

出久根育「あめふらし」Das Meerhäschen-下-  

前回のグリム童話 Das Meerhäschen-上-の続きです。

 

魚の腹の中に隠れたつもりの若者ですが、王女は12番目の窓からのぞき、とうとう見つけ出してしまいました。

テキストを読めますね。

f:id:cenecio:20160906145141j:plain

王女の頭、髪型というべきか、いつもシュールです。王女はこの国で絶対的権威だからどんな髪型もゆるされるのかな。

 

若者のチャンスはあと一回。

キツネのところに行きます。これが最後です。キツネにはアイディアがありました。

一緒にまほうの泉に行き、中に潜りました。キツネは、動物を商う市場の商人に化けました。

若者も水の中をくぐらされ、小さなあめふらしに変身させられました。

f:id:cenecio:20160906145514j:plain

 

商人に化けたキツネは町に出かけていき、この可愛らしい生き物を見世物にしました。たくさんの人が集まってきて、王女も見物にやってきました。王女はあめふらしが気に入り、買い取ることにしました。商人はすばやく若者に耳打ちしました。

「王女が窓のそばによったとき、いそいで彼女の髪の中にもぐりこむんですよ」

 

いよいよ王女が若者をさがす時が来ました。12番目の窓まできても見つからないので、王女は不安と腹立たしさでいっぱいになって、窓をたたきつけ、ガラスは粉々になってしまいました。

ふと髪に手をやると、あめふらしがそこにいるではありませんか。あめふらしをつかんで、ゆかになげつけ、

「わたしの見えないところにいっておしまい」

 

 若者は泉に飛び込み、もとの姿にもどりました。そしてお城にむかいました。

結婚式がとりおこなわれました。

王女は夫がみんな自分の才覚でやったものと思い、夫を自分より優れた者だと信じて疑いませんでした。

 

お話はここで終わり。

おまけに こんな絵がついています。

f:id:cenecio:20160906150644j:plain

 子どもたちがあめふらしをつついて遊んでいます。

 

挿絵を描いた人

Iku Dekune / 出久根育

f:id:cenecio:20160906151552p:plain出品作家1 A-L / handtohand311

1969年東京都生まれ。絵本作家、銅版画家。1992年 武蔵野美術大学油絵科・版画専攻卒業。主に子ども の本のイラストレーションを制作。1994年に自身作の 物語に絵をつけた最初の絵本『おふろ』(学習研究 社)が出版される。以後、多くの本の挿絵を描く。 2011年にはチェコの出版社による、カレル・ヤロミ ール・エルベンのおとぎ話集の挿絵を手がける。 2002年よりチェコ、プラハ在住。
主な受賞歴 2003年 グリム童話『あめふらし』(パロル舎)で、ブラ チスラバ国際絵本原画ビエンナーレ、グランプリ 2006年 『マーシャと白い鳥』(ミハエル・ブラートフ/ 作 偕成社)で、日本絵本賞大賞
展覧会歴(グループ展、個展) ギャラリー巷房(東京、銀座)にて、版画やタブロー の個展を定期的に開く。また、ドイツやチェコ各地に
おいても開催。 1998年ボローニャ国際絵本原画展に参加 2004年ボローニャ国際絵本原画展招待作家として、 ボローニャにて特別展と、この年のカタログの表紙絵 を描く
主な作品 『はるさんがきた』(越智典子/作 鈴木出版) 『ワニ』(梨木香歩/作 理論社) 『郵便配達マルコの長い旅』(天沼春樹/作 毎日 新聞社) 『わたしたちの帽子』(たかどのほうこ/作 フレーベ ル館)
『マーシャと白い鳥』 『おふとんのくにのこびとたち』(越智典子/作 偕成 社) 『十二の月たち』(ボジェナ・ニェムツォヴァー/再話 偕成社)

f:id:cenecio:20160906151917p:plain自画像

出久根育『おふとんのくにの こびとたち』原画展開催&インタビューです。 | メルヘンハウス

 

 出久根さんは今では世界的に活躍する有名な絵本作家ですが、ある人との出会いを抜きには語れません。それはスロヴァキアの絵本画家ドゥシャン・カーライです。この人のもとで学び、刺激を受けたことで出久根さんというアーティストが生まれたといってもいいでしょう。

こちら、ドゥシャン・カーライの代表作のひとつ、

不思議の国のアリスです。

f:id:cenecio:20160906113718p:plain

 

ドゥシャン・カーライは、40歳で国際アンデルセン賞画家賞を、当時のチェコスロヴァキア共和国で初めてもらいました。スロヴァキアの首都ブラチスラヴァの美術アカデミーで教えています。日本にも1990年代から何度も来ており、講座で指導したりして若い画家を育てています。

 

さて次回も出久根さんの作品です。

『あめふらし』は、木のパネルに油彩でしたが、今度はテンペラ技法で描いた絵本です。全く違う雰囲気で、一目見ただけでは同じ作家と気づかなかったほどです。

 

 

おまけ 

出久根さんマスキングテープ、人気です | 教文館ナルニア国

 

f:id:cenecio:20160906131434p:plain

f:id:cenecio:20160906131252p:plain

ほしいな♡

でも品切れらしい。

出久根育の「あめふらし」 Das Meerhäschen-上-

一度見たら絶対に忘れられない絵。

ことばにならない強烈な印象を残します。しかもグリム童話? えっ、あめふらし?

 絵を描いているのは 出久根育(でくね いく)さんという、プラハ在住の女性のかた。(詳しい紹介はあとのほうで)

f:id:cenecio:20160906115021j:plain

この本がパロル舎から出たのは2001年ですが、私が出会ったのはその10年後。

出会えてよかったな。これも日本経済新聞の記事のおかげでした。

記事は 今でも大切にとってあります。

f:id:cenecio:20160606170648j:plain

バスタブに魚、そして縁に立つ赤い服の少年。

バスタブ!?

なんなんだ、この世界は。 衝撃のあまり、すぐさま絵本を買い求めました。

新聞記事は原画を使っているから平らですが、同じ絵が絵本ではこうなります。

でも色がびっくりするほど深くて美しい。

f:id:cenecio:20160906120024j:plain

この「あめふらし」で、出久根育さんは2003年ブラティスラヴァ世界絵本原画展でグランプリを受賞しました。

上記の記事によると

・・・日本人によるグリム童話の「あめふらし」は審査員に強い印象を与えた。

 出久根はその時代の服装や意匠の質感、そして光線の加減までを自らの解釈で丁寧に描いただけではない。例えば湖をバスタブに、カラスの止まり木は衣裳のハンガーと、絵には物語を超えたファンタジーが宿る。まるで演劇の演出家のような独特の解釈と表現で、欧州の人たちは新鮮な驚きを持ってグリム童話を再発見した。

 

 さてお話ですが、ご存知でしょうか。いかにもグリムらしいちょっと残酷なお話なんです。

ものすごく気位が高くて、千里眼を持つ王女がいました。高い塔の12の窓からは、何でも見通せて、王女の目を逃れられるものなどこの世にありませんでした。

そろそろ婿を迎える年ごろです…つまり婚活ですね。自分と勝負して、姿を隠しおおせた者と結婚しよう、敗れた者は首をはねられ、杭に串刺しにしてさらし者にする、というのです。案の定、誰も成功しません。王女の眼から逃れられないのです。

あるとき三人の兄弟がやってきましたが、上の二人は運がなく、98番目、99番目の杭に突き刺されました。末の弟は、3回チャンスをくれ、三度目にしくじったら命はいらないから、と王女に頼みこみます。王女は、どうせ無駄なことよ、と憎まれ口をたたきながらも、見眼麗しい若者だったので、願いをきいてやります。

 

f:id:cenecio:20160906142926j:plain

このあと若者は森の中で三種類の生き物に出会います。

カラスを撃たないで助けてやります。絵がおもしろい。巣にワイヤーのハンガーがあるところや、若者がカラスの涙の粒を拾っているところ、くすっと笑ってしまいます。(カラスの巣にハンガーは他の国の人もわかるのかしら)

 

それから既に見ましたが、も助けてやります。

 

キツネも、ご恩がえしをしますから、と命乞いするので逃がしてやります。

f:id:cenecio:20160906143350j:plain

 

さて、若者はいよいよ姿を隠さねばなりません。どこへ隠れよう?

若者は助けてやったカラスに相談します。

すると自分の巣のなかにある卵のひとつに隠れればいい、とカラスは言いました。

 

 

ところが王女には、卵に隠れている若者が見えているのです。

家来に命じてカラスを撃たせ、卵を運ばせました。若者は中から出てくるしかありませんでした。

 

次に若者は魚に相談します。

すると自分の腹の中に隠れるよう、提案します。

f:id:cenecio:20160906144633j:plain

そうして魚は湖の底ふかく潜っていきました。

 

王女は見つけられるでしょうか。長いのでいったん切りますね。

 

 

続く

 

グリム童話のカラスの種類は何でしょうねえ。 

f:id:cenecio:20160912110559j:plain

 写真:近所の公園にいるハシボソガラス。

体は小さめで、おでこが出っ張っていないのが特徴です。

このときセミを食べていましたが、植物を好んで食べるそうです。

 

 

 

 

ハンス・フィッシャーのメルヘンビルダー 

メルヘンビルダーってなに?

今日はこの辺をちょこっとお話したい。というのもこんな本 『フィッシャーが描いたグリムの昔話 メルヘンビルダー』を出せる日本ってすごいな、と素直に感心してしまうのです。(うちの本ではなく、夏休みの図書館で見つけた印象深い絵本の一冊です)

f:id:cenecio:20160820132236p:plain 

フィッシャーが描いたグリムの昔話 メルヘンビルダー

絵: ハンス・フィッシャー
文: グリム
訳: 佐々 梨代子 野村 泫
出版社: こぐま社    発行日: 2013年07月01日

 

挿絵画家ハンス・フィッシャーは以前「長ぐつをはいたねこ」で紹介しました。 『こねこのぴっち』のほうが、キャラクター製品が数多く出ているから有名だと思います。

 

cenecio.hateblo.jp

 一枚絵

メルヘンビルダー とは、メルヘン=おとぎ話、ビルダー=絵という意味。

ひとつのお話の始まりから終わりまでが一枚の絵にギュッと固めて描かれるものです。ヨーロッパには15世紀くらいからあって、キリスト教の教えや昔話、伝説や世界の不思議な話などが、新聞くらいの大きさの紙に刷られ、字が読めない民衆にも絵で楽しめることから広く親しまれていました。

印刷技術の進歩とともに発展をとげ、19世紀のドイツで頂点を迎えます。木版画の「ミュンヘン一枚絵」(Muenchener Bilderbogen)と呼ばれるものが有名で、芸術性も高く、後世にも大きな影響を与えました。

 

 たとえば「長ぐつをはいたねこ」です。出典:ウィキペディアhttps://commons.wikimedia.org/wiki/Category:M%C3%BCnchener_Bilderbogen?uselang=de

f:id:cenecio:20160906093951p:plain

 

こちらは 「田舎のネズミと町のネズミ」。

f:id:cenecio:20160906094146p:plain

(作者、年号など解説はつけませんので、 詳しくはウィキペディア参照)

 

 こうした一枚絵を、現代人のハンス・フィッシャーがグリム童話を題材にやってくれたわけです。

こちらがその原書。

f:id:cenecio:20160820162539j:plain 

Märchenbilder 7 Märchen d. Brüder Grimm, gezeichnet

絵: Hans Fischer
出版社: Zürich Stuttgart Artemis Verl. 

雑誌に連載していたものをまとめて1961年にスイスで出版されました。そして日本の翻訳版には、原書にない絵も収録され、詳しい解説も巻末につけて、大人も子供も楽しめるような形で出版されるという、なんとも贅沢な本になっています。

 

表紙の絵は 「ヘンゼルとグレーテル」ですね。よく見てみましょう。

f:id:cenecio:20160906095225j:plain

真ん中のお菓子の家とお婆さんがすぐに目につきます。その周囲にお話が描きこまれていますね。既に話を知っているので、フィッシャーがどんな描き方をするか、大人としては興味しんしんです。


「うさぎとはりねずみ」はこんなふう。(左がちょっと切れてしまってすみません)

f:id:cenecio:20160906100301p:plain

ユーモラスですね。ウサギは走りつかれて死んでしまうのですが。

もちろんテキストも2~3ページほどついています。

これがまたすごくいいテンポの語りで、子供たちはきっと喜ぶでしょう。

f:id:cenecio:20160906101327p:plain

商品|こぐま社

「長ぐつをはいた雄ねこ」は真ん中にどんと猫を置くあたり、意表をつきます。

 

他にも次の作品が収められています。
・「おぜんよ、したく」と 金出しろば と「こん棒、出ろ」
・おおかみと七ひきの子やぎ
・しあわせハンス
・ならずもの
・七羽のからす 


 最後にこんな展覧会もあったんですね。

f:id:cenecio:20160906102335p:plain

 調べ物をしていたら見つかりました。5年前、7月2日(土)~7月31日(日)、神戸ファッション美術館エントランスギャラリーで開催された

「一枚絵」によるグリム童話の世界―19世紀ヨーロッパの手彩色版画展―

行けた人はラッキーでした。

 

 

 

 

 

La plus mignonne des petites souris 一番きれいな小ネズミの娘

今日はフランスの絵本です。

タイトル:La plus mignonne des petites souris 一番きれいな小ネズミの娘

出版社:Père Castor Flammarion フラマリオン社のPère Castorシリーズの一冊

出版年:1953年

(↓ うちのは古くて左側、色がとんでいます)

f:id:cenecio:20160829161424j:plain

表紙を見ただけでもうわくわくします。

小さいときにこの本を読んでもらった子は幸せだな、と思って羨ましくなります。

 

(残念ながら全部のページはスキャンできません)

最初のページ

f:id:cenecio:20160829161430j:plain

これがネズミのミナカジル家(注:Rongetoutとはなんでもかじってしまうという意味。皆齧る)のお宅です。

ミナカジル氏とミナカジル夫人には、それはそれは美しいお嬢ちゃんがおりました。

f:id:cenecio:20160829161434j:plain

ダンスも編み物もでき、お菓子も焼ければピアノだってひけるのです。

そろそろ嫁にやる年頃だ、うちの娘にふさわしいのは、世界で最も強い者でなければならない

f:id:cenecio:20160829161528j:plain

ミナカジル氏は婿を捜しにヘリコプターで旅に出ます。

 

 

f:id:cenecio:20160829161532j:plain

はじめに 上へ上へ飛んで、太陽の宮殿に行きました。

うちの娘の婿になってくださらぬか。あなたは世界で一番強いおかただ。

ミナカジル氏はそう言いました。

しかし太陽は思いもよらぬ返答をしました。

いや、それは間違いだ。わしより雲のほうが強い。雲はわしの姿を隠してしまうからな。

ミナカジル氏はペリコプターで下へと飛行し、雲のところへ行って聞きます。

すると雲は、自分をさっとふきはらう風の方が強いと言います。

 

ミナカジル氏は風車小屋に住む風のもとへ向かいます。

f:id:cenecio:20160829161537j:plain

雲のいうことは間違っている。あそこに建つ古い塔の方が強い。

わしがいくらびゅーびゅー吹いてもびくともしないからな。

 

ミナカジル氏はもうすっかり疲れていましたが、塔に向かって話しかけます。

f:id:cenecio:20160829164324j:plain

いやいや、残念だが、風は間違っておる。

わしより強いのは ネズミじゃ。ネズミはわしの一番丈夫な梁を ガジガジ齧りよる。

やつが齧り終えたときにゃ、わしは倒れてしまうだろうよ。

 

そこでミナカジル氏は そのコネズミに会いに行きます。

 

f:id:cenecio:20160829164338j:plain

うちの娘の婿になってくださらぬか。

小ネズミの中で一番きれいな娘じゃ。

コネズミは答えます。

お宅のお嬢さんのことはよく存じ上げております。

嫁にいただきとうございます。

 

めでたく二匹は結婚しました。盛大な式でした。

f:id:cenecio:20160829164342j:plain

ミナカジル氏はとっても満足です。なぜって娘は、

太陽より強い雲、

その雲より強い風、

その風より強い塔、

その塔より強いネズミのところに嫁いだのですから。

(終わり)

 

 

絵を描いた人はこちら。

f:id:cenecio:20160829162909p:plain挿絵画家、絵本作家 Étienne Morel (1924-1969)

対象年齢3歳から。今でもアマゾンで買えます。レビューを見ると、皆さん絵の美しさを絶賛!

可愛いし、ユーモアもあるし、気品も感じます。フランス語のテキストも簡潔でとてもいいと思います。

Étienne Morel氏は他にもたくさん作品があります。

f:id:cenecio:20160829170754j:plain

「赤いめんどり」という作品。

絵を見ただけですぐわかるほど、スタイルが確立されていますね。

 

 

f:id:cenecio:20160829171027p:plain

絵本キャンペーンの写真が可愛いので 最後に乗せておきます。

ちいさなヒッポ 世界で一番美しいカバ マーシャ・ブラウン-2-

f:id:cenecio:20160725175949p:plain  f:id:cenecio:20160725180152p:plain

ちいさなヒッポ

作・絵: マーシャ・ブラウン
訳: 内田 莉莎子
出版社: 偕成社

発行日: 1984年

 

本を開くとね、

f:id:cenecio:20160726121111j:plain

いきなりピンクの背景に、鶴とカバでしょ。

もうびっくりして次のページをめくると、またすごい!

f:id:cenecio:20160726121341j:plain

額に収めて部屋に飾りたいわ、と思ってしまいます。

暖簾にしてもいいねえ、日本家屋の玄関を飾るにぴったりだと思う。

てぬぐいはどう?テーブルクロスでもいい。(←妄想がふくらむ)

 

30ページ以上ある絵本で、どの挿絵の版画もすばらしい。ですが、残念ながらみんなコピーするわけにはいきません。

 

シマウマや水牛、ワニも描かれています。子供カバはワニに食べられそうになるのですが、危機一髪、おかあさんワニが子供の声を聞きつけて助けにやってきます。

すごい迫力です。絵の前でことばをなくします。ご自分で手に取って読むのがいいですね。

 

著者って何もの?

 ブラウン,マーシャMarcia Brown( 1918年7月13日 - 2015年4月28日)
1918年ニューヨーク州ロチェスターに生まれる。師範学校を出て、三年ほど教師として働いたが、絵本の仕事をしたいという望みが捨てきれず、ニューヨーク公共図書館で子どもの本についての経験をつみ、また国吉康雄などについて絵を勉強した。最初につくった絵本は「小さな回転木馬」で、その後「三びきのやぎのがらがらどん」(福音館)など多くの想像力ゆたかな絵本をつくっている。アメリカの最優秀絵本賞「コールデコット賞」を三度(「シンデレラ」「むかし、ねずみが…」「影ぼっこ」)も受けた第一流の絵本作家である 

1994年には 来日したそうです。

f:id:cenecio:20160725180616p:plain1969年の作品

Images from the Marcia Brown Collection

 

f:id:cenecio:20160725181212p:plain f:id:cenecio:20160725181300p:plain

f:id:cenecio:20160725181224p:plain

Marcia J. Brown '40 Biography

 

おもしろいですね、国吉康雄について絵を習っていたって・・・。

国吉康雄(くによし やすお、1889年9月1日 - 1953年5月14日):日本の洋画家。岡山県。 20世紀前半にアメリカ合衆国を拠点に活動した。

 
ほかにもいろいろな本の挿絵を描いています。

f:id:cenecio:20160725181346p:plain

f:id:cenecio:20160726114851p:plain

一度見たら忘れられない白鳥!

 

追記:アメリカの本物のカバ(オランダの新聞より)

f:id:cenecio:20160816063328p:plain

ロサンゼルスの動物園。口を開けて冷たい水をキャッチするカバ。写真ロイター。

 http://nos.nl/

 

うちのアリス

f:id:cenecio:20160728224821j:plain

 

さて夏休みに入りますので、少しお休みいたします。

皆さま、たのしい休暇を!

そしてまたあとでお会いしましょう!

 

三びきのやぎのがらがらどん マーシャ・ブラウン-1-

f:id:cenecio:20160725084204p:plain f:id:cenecio:20160725181453p:plain

三びきのやぎのがらがらどん  (ノルウェーの昔話)

絵: マーシャ・ブラウン
訳: 瀬田 貞二
出版社: 福音館書店

発行日: 1965年07月

 

「ノルウェーの昔話」となっているのは、ノルウェー人のふたり、アスビョルンセン(Peter Christen Asbjoernsen, 1812-1885)とモオ(Joergen Moe, 1813-1882)が採集した北欧民話で、大変有名な話だそうです。

多くの人がなじんでいるのは、上記アメリカのマーシャ・ブラウン挿絵の絵本だと思います。

押さえた落ち着いた色使いですが、ものすごい迫力です。子供たちは目が離せないし、口もきけず、話に吸い込まれていきます。

マーシャ・ブラウンはいろいろな画風があって、同じ人と知ったときは唖然としました。(次回もマーシャ・ブラウンの絵本を扱います)

 

三びきのやぎのがらがらどん、お話は単純で、三(さん)がキーワードです。

f:id:cenecio:20160726102855p:plain

三匹とも同じなまえ。「がらがら」というのはしゃがれた声のことを表しています。「どん」は「さん」や「君」にあたる呼び方です。

がらがらどん三匹は、体の大きさは違って、絵の通り。

山の草場にいきたいのですが、途中、谷川にかかる橋があって、橋の下には大きな鬼が住んでいます。北欧では「トロル」と呼びます。

ぐりぐりめだまは さらのよう、つきでた はなは ひかきぼうのようでした。

はじめに小さいやぎが渡ります。

「すこし まてば、二ばんめやぎの がらがらどんが やってきます。ぼくより ずっと おおきいですよ」

二ばんめやぎの がらがらどんが来ます。

f:id:cenecio:20160726103906p:plain

 

あとから大きいやぎのがらがらどんがやってくることを告げます。

そしてがたん ごとん がたん ごとんと橋を鳴らしながらやってきて

「おれだ!おおきいやぎの がらがらどんだ!

と、やぎは いいました。それは ひどく しゃがれた がらがらごえでした。

 

f:id:cenecio:20160726102602p:plain

 トロルに飛びかかると、木っ端みじんにして谷底へつきおとしました。

それから山へ登っていきました。

f:id:cenecio:20160726104559p:plain

これで話はおわりです。

チョキン、パチン、ストン(英語:Snip, snap, snout. This tale's told out.)

これが話の終わりの合図で、子供たちはいつもの日常へと戻ります。

日本でも結句として「とっぴんぱらりのぷう」などがあります。

こちらが大変詳しく勉強になりました。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

 

 

ほかにもこんな挿絵の本があります。この挿絵も味があっていいですねえ。

f:id:cenecio:20160726104736p:plain

The Three Billy Goats Gruff (Paul Galdone Classics) (英語) – 1981年
Paul Galdone (著)

 

個人メモ

Three Billy Goats Gruff

 

今日の写真:

北欧、スウェーデンの街角写真を…古いんですが、ちょっとスキャンしてみました。1983年です。

f:id:cenecio:20160726111110j:plain

列車 当時の一等車

f:id:cenecio:20160726111125j:plain

骨董店

f:id:cenecio:20160726111134j:plain

路地と住宅

わたしとあそんで Play with me

f:id:cenecio:20160724183143p:plain

わたしとあそんで

文・絵: マリー・ホール・エッツ
訳: 与田 凖一
出版社: 福音館書店

発行日: 1968年08月



 

 

 つい3日前に同じ作家の「もりのなか」を扱いました。

cenecio.hateblo.jp

 

アメリカで1955年に出版された本です。

youtubeで英語読み聞かせを見つけて、ちょっと嬉しい。読んでもらうと私も絵に集中できるから。読んでもらうってこんなに贅沢なことだったんだな。

 

お話はあまりに単純で、ここにいちいち書いていたら、私は本当に間抜けな人ということになってしまいます。

エッツは「もりのなか」ではモノクロでしたが、今回はクリーム色と、女の子のブロンドの髪のために黄色をほんの少し使っていて、効果的だと思いました。

好きなところは、女の子の目、表情と、おひさま

目がくりくり、右へ左へ動きます。

体はじっとしたまま。

さっきは逃げていった動物や生き物が寄ってきます。

f:id:cenecio:20160724183805j:plain

f:id:cenecio:20160724183817j:plain

f:id:cenecio:20160724183824j:plain

f:id:cenecio:20160724183831j:plain

ああ わたしは いま、とっても うれしいの。

とびきり うれしいの。

なぜって、みんなが みんなが わたしと あそんでくれるんですもの。

エッツの幸せな幼年時代が見えるようです。

終わり

 

 

 

おおかみと七ひきのこやぎ (グリム童話)

DER WOLF UND SIEBEN GEISSLEIN(Felix Hoffmann)

f:id:cenecio:20160720185730p:plain

 

f:id:cenecio:20160721125805p:plain

おおかみと七ひきのこやぎ

作: グリム童話
絵: フェリクス・ホフマン
訳: 瀬田 貞二
出版社: 福音館書店

発行日: 1967年4月1日

 

みんな知っているお話しですが、どの挿絵画家のバージョンで読むかによって印象も違ってくると思います。

うちはこのスイスの画家ホフマン(Felix Hoffmann)。

2012年に原画展があったみたいで、こちらサイトが詳しい。参考までに。

book.asahi.com

 

f:id:cenecio:20160721130037p:plain

おかあさんが美人でおしゃれ。この絵だけでもう好きになります。

絵が好きかどうかはとても大切です。

お母さんは服を着て二足歩行なのに、7匹のこやぎたちは四足なんですよね。

f:id:cenecio:20160721130303p:plain

おおかみは声をきれいにするために、村の雑貨屋でチョーク(白墨?下に注あり)を買ってなめます。

f:id:cenecio:20160721130501p:plain

足を白くするために粉屋行きます。

そしてしろい足をこやぎたちに見せて、

「あけておくれ、こどもたち。おかあさんが かえってきたよ」

 

まんまとだまされたこやぎたち。

 

f:id:cenecio:20160721130420p:plain

こやぎたちは隠れようとしますが、6匹が食べられてしまいます。

7匹目、柱時計の箱のなかに隠れた子だけは見つからず、母親が帰ってくると一部始終を話します。(**椅子に注目してください。下に注あり)

f:id:cenecio:20160721125911p:plain

キュリオブックス 【Der Wolf und die sieben Geisslein】

母親は狼の腹からこやぎたちを助け出し、かわりに石を詰めて、再び腹を縫い合わせました。

狼は井戸に落ちておぼれ死んでしまいました。「おおかみ しんだ!おおかみ しんだ!」みなで井戸の回りをグルグルまわりながら、踊りました。

 

・・・という、とってもかわいそうなおおかみの話でした。

え、違うでしょ。狼は「悪」なんだから、悪を退治した勇敢なお母さん、母子家庭で、一人奮闘するお母さんの話でしょ。

どうしてもそうは思えない私。

本の裏表紙を見て、この一家のお父さんの写真が壁にかかっているのを見てもなおかつ・・・。

f:id:cenecio:20160721130217p:plain

 

f:id:cenecio:20160721130832p:plain

 <フェリクス・ホフマン>
1911年、スイス・アーラウ生まれ。75年没。バーゼル美術学校(スイス)で学んだ後、カールスルーエの州立美術学校(ドイツ)で木版とイラストレーションを学ぶ。石版印刷や銅板印刷の現場で経験を重ね、その後は美術教師をしながらスイス各地にフレスコ壁画やステンドグラスを、また本の挿絵や装丁の仕事を多く残した。壁画はアーラウ市の門、教会、小学校などに、ステンドグラスはアーラウ市庁舎、教会などで今も見ることができる。日本で出版された絵本は『ねむりひめ』(1963年、福音館書店)『おおかみと七ひきのこやぎ』(1967年、福音館書店)など多数ある。

*チョーク、といってもドイツ語Kreideは石灰質の土のことらしい。

www.zeit.de

こちらの新聞のコーナーで、ドイツ人がKreideを食べて、本当に声をきれいになるか実験している。が、別に変わらないようだ。

 

**椅子

うちのと同じタイプなので、ここ一番うけるところ!

f:id:cenecio:20160721135618j:plain

f:id:cenecio:20160721135625j:plain

座面の美しい模様がまだ少し残っています。