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カッパの周辺・雑記(象牙多層球 をめぐって)チェコのカッパ-3-

チェコとスロヴァキア

最初に言及から始めさせてください。shellさまです。

わたしは実は・・カッパが怖いのです。苦手なのですよ・・・笑*
鱗をもたない生き物で、ナマズとか山椒魚などの皮膚の感じがしますね

わかります。あのヌルヌルがいやなんですよね。

逆に『おかしな結婚式』の初めの方に、こんな一節があります。カッパから見た鯉の描写です。 

p12

鯉はどうやっても鯉でしかありません。体じゅううろこだらけで、ひればかり。

ものしらずでなににでもおどろくし、なまけもので、礼儀なんてものはこれっぽっちもわきまえていないのです。

完全に 上から目線です。チェコではカッパは偉いのです。自然界の主みたいな感じもすれば、浪士さまのあこう劇場の登場人物みたいなカッパたちも出てきます。

ずっと昔に読んだので、今ここに資料とか持ってこれないのですが、ヨーロッパの多くの場所で「カッパは川の水死体」という説もあります。水の流れでゆらゆら動いているように見えるのです。

 

簡単にカッパ作品の作家たちについて述べておきます。

『おかしな結婚式』

お話:ボフミル・ジーハ(Bohumil Říha)

1907 -
チェコスロバキアの作家。
元・チェコ作家同盟書記,元・国立児童図書出版所所長。
ボヘミア生まれ。
教師や視学官を経て作家となり、1930年以降新聞や雑誌に作品を発表し、’52年チェコ作家同盟書記となり、’56年国立児童図書出版所所長を務める。’75年チェコスロバキア国民芸術家の称号を受け、’80年国際アンデルセン賞を受賞する。作品に「ぼくらは船長」(’63年)、「ビーテクのひとりたび」(’73年)など。

コトバンクより引用

挿絵:ヤン・クドゥラーチェク(Jan Kudláček 

1928-

モラヴィア地方、モラフスキー・クルムロフに生まれる。プラハの国立美術学校を卒業後、カレル大学で芸術史を学ぶ。1957年に造形美術アカデミーを卒業してから、子どものためのイラストを描く仕事に従事する。柔らかな色調で幻想的な作風を特徴とする。

幼いころ過ごした自然豊かな故郷の生物のほか、池や川の世界、とくに魚やカッパを好んで描く。

1972年に外国語の出版物を扱う出版社より、ルケショヴァーの本のイラストを依頼される。1971年に『ペトルーシュカ(Petruška, 1970)の挿絵でブラティスラヴァ世界絵本原画展入賞。ルケショヴァーと組んだ四季をテーマにした4部作のほか、『チョウさんさようなら』、カッパの世界を描いた『カッパたちはどうやってナマズたちをなだめたか』などがある。

国際子ども図書館 チェコへの扉』より引用

 ヤン・クドゥラーチェク 仕事場など

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Vzpomínání se závany motýlích křídel aneb významné životní půlkulatiny ilustrátora a malíře Jana Kudláčka

ヤン・クドゥラーチェク インタビュー(チェコ語。個人メモ)

www.youtube.com

Malíř a grafik Jan Kudláček - Oficiální stránky Obce Dolní Dubňany

 

ルケショヴァーとタッグを組んだ作品が素晴らしいのです。

だいたいこんな感じ。

http://www.lab-curio.com/book/0905/IMG_8004.jpg

http://www.lab-curio.com/book/0905/IMG_8005.jpg

http://www.lab-curio.com/book/0905/IMG_8006.jpg

 http://www.lab-curio.com/book/re/DASSCHNEEPFERD.htm

 

 ヨゼフ・ラダについてはウィキペディアを見てください。(簡単ですけど)

ヨゼフ・ラダ - Wikipedia

チェコ近代絵画におけるもっとも「チェコ的」で独創的な画家で、チェコ人で知らない人は絶対にいないし、カードや絵葉書など多数キオスクなどで売っており、旅行に行ったらすぐ目につきます。うちにも数十枚あるのです。

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https://s-media-cache-ak0.pinimg.com/236x/b6/d1/da/b6d1dae7bf9efe16560a0437b8a2dedf.jpghttps://s-media-cache-ak0.pinimg.com/236x/2c/03/bf/2c03bf1078c0ef51e80c41948617daab.jpg

絵本画家でもあるが、大人の小説の挿絵もたくさん手掛けています。

とにかくこの人について語ると、うち中からあの本もこの本も取り出さなければならず、キリがないのでここで止めますね。

 

あとカッパは現在でもよく扱われています。

最近のカッパ氏ですね。

https://s-media-cache-ak0.pinimg.com/564x/59/3a/ae/593aaefb0c6ca78a8e05d47b6f1ba2cd.jpg

 

カッパ関連、短いですがここで終わります。

 

 

本日のたまうきさまの記事

ni-runi-runi-ru.hatenadiary.jp

 

それから

りん (id:miyamarin)

故宮博物館展に行ったとき、似たようなのを見ました。あとはNHKのテレビです。

すごいですよね。すべて計算されて彫られているんですよね。それをドイツ人だったか、どこかのヨーロッパの人が、解き明かしたとか?

りんさま、勝手に引用してごめんなさい。

正しいです。NHKでやったのも知っています。見ていないんですけど。

りんさまのコメを見て、すぐに記事に入れようと思いました。

 

私が個人的に思い出したのはこの本です。

エンデ全集〈1〉ジム・ボタンの機関車大旅行  – 2001/6/18
ミヒャエル エンデ (著), 上田 真而子 (翻訳)出版社: 岩波書店 (2001/6/18)

p59「そうそう、象牙細工師も~」から読んでください。

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というわけで、おもしろい日曜日でした(^O^)

 

追記:

奥さまがた

マミー (id:mamichansan)

りん (id:miyamarin)

たまうきさま

たまうき (id:ni-runi-runi-ru)

ヨーロッパでも古来から象牙の教会調度品・美術品はまず多くあるし、博物館にも中国の作品が飾られています。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/1b/Crosseron_MNMA_Cl.430.JPG

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/4c/Pyxis_Khalaf_Met_L2011.46.7.jpg/800px-Pyxis_Khalaf_Met_L2011.46.7.jpg

 

多層球は世界中に散らばっており、エンデはもちろん実際に現物をみたことがあると思います。エンデは日本にもすんでいたし、後妻は日本人でしたから、日本の専門店や博物館で多層球を見たかもしれませんね。

 

 

中国人が手を使ってやった気の遠くなる作業が、ヨーロッパの卓越した旋盤技術で再現もできるらしいです。(NHKの番組を見ていなくて残念)。

 

下の動画はドイツじゃなくて台湾の人があげているものです。

1分以内で多層球が完成します!

 

www.youtube.com

 

おかしな結婚式 (チェコのカッパ-2-) 

チェコとスロヴァキア

おかしな結婚式 大型本 – 1986/8
ボフミル ジーハ (著), ヤン クドゥラーチェク (イラスト), 井出 弘子 (翻訳) 95ページ
出版社: 童心社 (1986/08)

 

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今日もカッパの話なのですが、初めて読む方は前回記事で、チェコのカッパの基本知識仕入れてくださいね。

民話や伝説を扱っているのではなく、子ども向けに書かれた作品を読んでいます。

 

さてこの本には、カッパは何匹も出てきます。カッパならではの特徴はあまりなくて、私たちと似ている人間臭いカッパです。

 

このスターレク爺さんはカッパの親分。銀の池に住んでいる。

いつも家来のナマズを従えている。水の中でも親分、そして陸の野原や森においてもやっぱり親分。長老といった風格ですね。

f:id:cenecio:20170303183718p:plainスターレク

スターレクには気にかかることがある。

鯉のベーナが結婚式を挙げたがらないことだ。ベーナはもう若くもなく、長いことヨハンカ(同じく鯉)と連れ添っていて、子どももたくさんいる。

しかしけじめとして式を挙げてもらいたい。スターレク説得にあたるのだが、鯉のベーナは反抗的だ。頭にかぶった麦わら帽子は脱がないし、パイプタバコを吸っている。タバコはカッパにだけ許されていることなのに。

「ときどき王冠をかぶったりしているそうじゃないか」とスターレクは問いただす。

「子どもたちと王様ごっこをしていたもんで」とベーナ。

 

ねえ皆さん、この辺で「ええっ?!」と思うでしょう。

鯉って魚なのに帽子や王冠かぶったりパイプくわえたりするわけ?

そう、お話を作った人(回をあらためて紹介する)と絵を描いた人は別なのですが、初めて絵を見たとき、お話にそぐわない気がして仰天しました。

なんと可愛い装飾的な鯉であることか!しかもどうやって描いたの?と思いました。

 

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パイプをくわえているのがベーナ。隣がヨハンカ。

 

ベーナはしぶしぶ、スターレクのいうことを聞いて結婚式をあげる約束をする。

「これからすぐ家へかえり、ちゃんと用意をするのだ。水曜日、太陽が森の上にのぼったら、おまえたち二人は、結婚のパレードのなかにいるのだ。仲人には、カワカマスとカワスズキがなる。・・・

 ヨハンカには、わしの持っているベールのなかで、いちばんよいものをおくるから、それを着せなさい。」

結婚式は、皆が集まって美しいふるさとのことを喜び合う、口実のようなもの。

しかしベーナはお祭り騒ぎが嫌いだし、こんなに歳をとっているのに今さら式などおかしいと思っている。その気持ちにヨハンカも共感している。

そんな二人をよそに、式の準備は着々と進む。

 

子分のカッパたちを一部紹介。

左:バイオリン弾きのカッパ  中:笛吹カッパ  右:おしゃれな銀色カッパ

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結婚式の知らせをうけて、魚はもちろん、カエルやザリガニ、昼の小鳥、夜の小鳥たちも大喜び。

皆が集まって、御馳走を食べたり、音楽を楽しんだり、花火を見たり、とそれはそれは華やかなのだから。また晴れ着で着飾り、自分の美しさをみせびらかすチャンスでもある。

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どれもこれもコピーしたいくらい、絵がおもしろいのです。

いくつか紹介します。魚と鳥です。

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私が気にいっているおばあさんの魚です。

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鉄砲を持って見張りをするフクロウ。

 

次の4枚、このインパクトに勝てず、やはり貼り付けてしまいました。

(ヤバい。この時点で私のフォトライフはもう10%です💦)

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さて結婚式。

おめかししていますね。

左下:ヨハンカのベールの美しいこと。

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結婚式の準備はOKです。 これでめでたしめでたし、と終わると思うでしょう?

違います。

 

「まあ一回だけ、結婚式をがまんしてくれよ」と

カッパに懇願され、逃げない約束をする二人。

 ベーナ「やりたいようにやるがいい。わしは目をつぶり、ふれをふせて、息をとめることにする。結婚式のときは、ただの丸太のように見えるだろうよ」

ヨハンカ「わたしも丸太になるわ。ねえ、ベーナ、結婚式がすんだら、一緒に目をさましましょうよ」

 

当日、結婚式のために皆が集まっている。スターレクの挨拶が始まる。二人はまだ出ていかない。控えの間で聞いている。

立派な挨拶に、皆が拍手を送っている。

スターレクが続ける。

 

一晩考えたのだが、結婚式に花嫁花婿が一緒にいなければならないとは、どこにも書いてない。もしかすると二人は村から散歩に出て、ふたりきりでアシの間を泳ぎ回ったりしたいかもしれない。二人を無理にここに立たせようとしたのはまちがいであった。

二人の生活がこれからも変わりなく続きますように。これからの日々がみんなの喜びとなり、わたしたちを取り巻く美しい自然を楽しむことができますように。

 

スターレクが話し終わったとたん、結婚式の楽しい気分が爆発した。そのあと皆でおおいに楽しんだ。スターレクはこの世で一番賢いカッパだと褒め称えられた。

 

そして鯉の二人は、というと、アシの間の、二人きりになれるところへ入っていった。

 

おしまい。

…という話です。

挿絵は様々な技法で描かれており、シンプルな鉛筆画もあります。

作者と画家については次の機会に紹介します。

 

 

 

 

おばけとかっぱ (チェコのカッパ-1-)

チェコとスロヴァキア

 カッパ(かっぱ、河童)は 日本人なら誰でも知っている愛すべき妖怪です。

柳田國男の「河童駒引」や折口信夫などの著作も有名ですし、芥川龍之介 も『河童』(昭和2年)という作品を書いており、命日の7月24日は「河童忌」と呼ばれています。(芥川『河童』は1958年にスロヴァキア語訳が出版されている)

 

 そして私はチェコのカッパの話にも馴染んで育ったのです。過去記事でも取り上げたカレル・チャペックの作品集ですが

チェコ好きのきっかけはチャペック兄弟 -Josef Čapek- - 子供の領分 Le Coin des enfants

『長い長いお医者さんの話』(岩波書店中野 好夫訳、ただし英語からの重訳)。

この本の中に「カッパの話」というのがあります。

引用します。

(略)

それからフロノバじいさんの水車の前にも、一匹住んでいました。こいつは、水の中で馬を16頭飼っていました。技師たちが、そこを流れる水の力が16馬力だ、といったのは、そのためなのです。この16頭の白馬が、せっせと引っ張っていたものですから、水車はいつもクルクルと、それは威勢よく回っていました。

フロノバじいさんが死んだ晩、そのカッパは、だまって16頭の馬の引き綱をはずしてやりました。そこで、ちょうど三日のあいだ、水車は死んだじいさんのために、じっと、とまったままになっていました。

(略)

ここはほんの導入部で、話はこれから始まるのですが。(太字は私)

カッパは日本だけのものじゃないんですね。朝鮮半島からヨーロッパにかけて、水の精と馬にまつわる話はたくさんあるそうです。興味のあるかたのために、記事末に参考文献を一冊載せておきました。

 

チェコのカッパ

基本知識として確認します。というのもチェコでもお話によってバリエーションがあるので。

 

チェコ語でカッパは Vodník といって”水男”、川や湖や池などの水底に住んでいる。

粉ひき小屋のそばの池が多い。池の主と考えられており、池や水車や魚のめんどうをみて、たいていは村人ともなかよしである(図③)。

悪いカッパもいて、水車の水を止めたり水車の羽根を壊したり。また、水辺に近づいた人間を引き込んで溺死させることも。

水の中では力があるが、陸に上がると力は弱い。緑色の燕尾服を着ていて、それはいつも濡れていてる。乾くと神通力がなくなったり死んでしまうといわれている。

体は緑色で水掻きが付いた手足を持っている。赤い帽子に赤い靴、そしてパイプをくゆらしている。月夜の晩に、柳の枝に腰掛けて靴を直すといわれている(図④)。

昔話では、溺死者の魂を壺に入れて集めたり、娘をさらって妻にするというのもある。またドボルザーク交響詩「水の精」(The Water Goblin、1896)でも扱われている。

 

おばけとかっぱ

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おばけとかっぱ  (世界傑作童話シリーズ) 1979年
ヨゼフ・ラダ (著, イラスト), 岡野 裕 (翻訳), 内田 莉莎子 (翻訳)、173ページ

出版社: 福音館書店

今日はこちらの本。 

表紙をめくると

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右頁:

パイプをくゆらせているのが主人公かっぱのブルチャール

緑色のジャケット、赤い靴、赤い帽子(ときに緑の帽子も)、長い金髪を垂らし、たいていパイプをふかしている。住まいは水の底だが、ペットの猫もいて、室内の調度品などは人間の家となんら変わらない。

ナマズにまたがっているのは息子のプレツ

シスロフ村の古びた水車小屋の池に住んでいる。

 

基本知識で紹介した恐ろしげな妖怪としてのカッパではなく、チェコ児童文学の世界では、人間臭い愛すべき登場人物として描かれます。そしてチェコの子どもだったら誰しも子供のころに読む本です。

 

そしてここに親友のおばけ ムリサークと、その息子ブバーチェクが加わります。おばけは人を怖がらせるのが商売ですが、自分の村ではおどかし稼業がうまくいかなくて、友人のカッパに誘われて引っ越してきたのです。

さらに村人たち、その子どもたち、伯爵夫人や泥棒たちなども混じって、様々な事件が起こります。

全部で11の話がありますが、全部はとても書けないので、興味のあるかたはご自分で読んでくださいね。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ちょっと絵の解説だけ。

 図③

プレツ もブバーチェクも いってみれば普通の子どもですから、村の子どもワシークとマリヤンカと仲良くしています。そしてこの子たちはかっぱのブルチャールから昔話を聞くのが大好き。水車小屋に集まって村人たちは一心にお話に耳を傾けます。

http://www.pohadkar.cz/public/media/Bubaci_a_hastrmani/obrazky/obrazky-bubaci-a-hastrmani-2.jpg

 

図④

カッパは水の中でも陸の上でも使える靴を自分で作ります。手元がはっきり見える満月の夜が一番仕事ができます。

ブルチャールは、村の学校を卒業したプレツを靴屋のところへ見習奉公に出しました。

https://s-media-cache-ak0.pinimg.com/236x/ee/6a/9b/ee6a9b5452b3f965a20ad5dc33428c58.jpg

 

図⑤

ワシークとマリヤンカは空の冒険をします。

おばけの飛行機に乗せてもらうのですが、なんのことはないほうきなのです。

ですがブバーチェクが操縦するとビュンビュン飛びます。(うしろでプレツがマリヤンカを支えてあげている)。このあと大人たちに叱られるんですがね。

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⑤ 

ヨゼフ・ラダの話は、いつもほのぼのとしたユーモアに溢れています。

たとえば

かっぱは今でも水の底の壺に、人間の魂を詰めているのかと聞かれ、

「ほかのかっぱの手前もあるから、人魂は置いておかないわけにはいかない。・・・が、もう半分に減ってしまったよ。うちの坊主が少しずつかじっているからな・・・」 

とか

世の移り変わりも激しく「おばけの自動販売機」なんかができて、「昔から続けてきたていねいなおどかしの仕事を、機械にさせるとはあんまりだ」と怒ったり。

また(p44-45)

「わしには、どうなろうが同じことだ。・・・わしはどっちみち、かっぱの年金生活者、つまりご隠居ってわけだからね。

だが気の毒なのは若いかっぱたちさね。水の中に人を引っ張り込んだりする仕事がなくなってしまった。今ではどこのうちにも風呂があって。わざわざ池に来て・・・水浴びしようなんて人は誰もいない。風呂なんかなくしちまって、人間はまた池で水浴びをすりゃいいんじゃ。失業したかっぱを救うために!」

 

 

「まっぴらごめんだね。がまんできんのは、あのコンクリの橋だ。どんな小さな川にもどんどこコンクリの橋かけちまったうえに、らんかんまでつけてくれるんじゃから。

・・・古い腐った橋を壊されたのは、まったく残念だったね。あの橋は、むすめっこが池に水をくみにきたりすると、足元でぽきりと折れて、ドボン!水に墜落ってぐあいで、すばらしかったもんだがねえ」

 

といった調子です。なんとなく雰囲気はわかってもらえましたか。

今日はこのへんで。

次回もかっぱが出てくる話です。

 

参考

チェコ語原書 新版と旧版

f:id:cenecio:20170221170612p:plainf:id:cenecio:20170221171148p:plain⑥⑦

 

*作者ヨゼフ・ラダ → 3月5日の記事へ。

 

 

研究書 

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51KI%2BljG8gL.jpg

 

 「水辺の牧にあそぶ馬を河童が水中に引きずりこもうとして失敗するという伝説は、日本の各地に見られる。この類話が、朝鮮半島からヨーロッパの諸地域まで、ユーラシア大陸の全域に存在するという事実は何を意味するのだろうか。

水の神と家畜をめぐる伝承から人類文化史の復原に挑んだ、歴史民族学の古典。」(解説より)

 

スロヴァキアが生んだ色彩の魔術師 ドゥシャン・カーライ『不思議の国のアリス』

チェコとスロヴァキア

 ドゥシャン・カーライ

今日は作品というより、一人の画家の紹介です。

このかっこいいタイトル「スロヴァキアが生んだ色彩の魔術師」は、

もちろん私が考えたのではなくて、滋賀県立近代美術館の企画展から勝手に借りてきています。あとで紹介します。

 前にshellさまより質問がありましたが、このブログのヘッダの絵、女の子と小鳥、この絵を描いた人なのです。 ドゥシャン・カーライのことはあめふらし』のところで簡単に紹介しました。つまり出久根さんのお師匠さんのひとりですね。

cenecio.hateblo.jp

cenecio.hateblo.jp

 

 今日はちょっとだけ、カーライの代表作(のひとつ)

不思議の国のアリス』を見ます。(写真は原書)

そして私はこの本しか知らないんです。

興味を持たれたら図書館などで他の本もあたってみてください。

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日本では

不思議の国アリス 大型本 – 1990/2
ルイス・キャロル (著), ドゥシャン・カーライ (イラスト), 矢川 澄子 (翻訳)

大型本: 109ページ
出版社: 新潮社 (1990/02)

 

表紙を見ただけでぶっ飛びますね。天才と呼ばれて世界中にファンが多いドゥシャン・カーライ(1948年6月19日ブラチスラヴァ生まれ)は、栄誉ある国際アンデルセン賞画家賞を40歳のとき受賞しました。

絵本界のノーベル賞のようなものですね。当時のチェコスロヴァキア共和国で初めてでした。まだベルリンの壁崩壊の前です。

当時、チェコスロヴァキアのような社会主義国では、芸術家の運命は過酷でした。自由な表現や活動を尊ぶ彼らは、当局によって監視下に置かれたり、冷遇あるいは無視されたりして苦難の日々を送りました。共産党員であることが必須、また党の方針にそって芸術活動を行えば安泰でしたが…。

才能のある画家たちは画業をやめ、子どもの本のイラストを描いたり、絵本を作るほうに道を求めました。そんなわけで美術の才能はどっと児童書界に流れ込んだのです。そうした時代の果実を、日本に住む私たちは享受しているわけなんですね。

カーライの住まいはチェコ共和国ではなく、スロヴァキアのほうで、首都ブラチスラヴァの美術アカデミーで教鞭をとっているそうです。

1990年代から何度も来日し、ワークショップを開いて日本の若い画家と交流を続けています。

 

https://static.wixstatic.com/media/32c268_39db085ba6fc4c6cbee6bfc2f7b79e3c.jpg/v1/fill/w_178,h_202,al_c,q_80,usm_0.66_1.00_0.01/32c268_39db085ba6fc4c6cbee6bfc2f7b79e3c.webp

KADS New York | fine art print and publishing

 

あの女の子と小鳥の絵はこちら(*)で見つけました。タイトルは『満点をもらったおばかさん』(1983年)だそうです。

滋賀県立近代美術館の企画展 http://www.shiga-kinbi.jp/?p=9597

スロヴァキアが生んだ色彩の魔術師 『ドゥシャン・カーライの超絶絵本とブラチスラヴァの作家たち -『アンデルセン童話集』の挿絵原画100点一挙初公開-』
2010年4月24日 ~ 2010年6月27日

 

またその翌年にはこちらの展覧会。

非常によい紹介文なので引用します。

〈企画展〉東欧と日本を結ぶ 色と線の幻想世界 ドゥシャン・カーライ×出久根育 | 安曇野ちひろ美術館

シェイクスピアオスカー・ワイルドといった文学作品の挿絵を多く手がけるカーライは、大切なのは、「いかにテキストを深く読み込み、自分のものにして表現するか」と語っています。

『魔法のなべと魔法のたま』(1989年)と『3つの質問』(2007年)との間には、18年の歳月が流れています。以前に比べ、一部に彩度のより高い色が使われるなど変化も見られますが、少しくすみのある柔らかなピンクをベースに、細かく線を重ね、微妙な色合いで丁寧に描くスタイルは、年を経ても変わりません。その作品からは、作家のつくった作品に向き合い、自身の世界観を表す真摯な姿勢がうかがえます。

本展では、アンデルセン賞受賞後の1989年に描かれた作品、未発表アニメーション作品、銅版画、1999年以降に制作され、当館初公開の新収蔵作品等を展示し、カーライの多様な仕事の魅力を紹介します。

 

さて 『不思議の国のアリス』はページをめくると、こうです。

おやま、これがアリス?黒い短髪で青のジャンパースカートを身に着けて、

どことなく東洋風の顔立ちです。しかも生意気そうな強そうな子ですよ。

そしてうさぎも、これまで見たのとはかなり違いますね。

色も彩度が低く、細かい描きこみの線や点々がおもしろい。

 

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アリスはもう一枚だけ載せておきます。

小さくなったアリス!

からかわれているような縮みようです。

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不思議の国のアリス』はだれでも話の筋を知っていると思うので、

絵に集中できます。

鳥を二羽、切り抜いてみました。

カラス。

 

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こちらはなんの鳥でしょうか。

happyさんにお尋ねしようと思います。

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鳥を描いてもカーライ・ワールドです。

頭になにか乗せるのが好きですね!

 

最後にもう一枚、スキャンしてみました。

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奇想天外な作画だらけなので、ここで説明することは不可能です。

絵は大変に多く、一つずつに時間がかかります。

ドゥシャン・カーライの世界、ほんのちょっとですが、のぞいてみました。

興味があり、チャンスがありましたら 図書館などでどうぞ。

 

ドゥシャン・カーライはここまで。

次から二回続けてチェコのお話、両方ともカッパが出ます。

カッパは日本同様、チェコでもとても馴染みのある生き物です。

 

追記:カーライ図鑑

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カロリーヌの絵本「ユピ学校へ行く」-3-

フランス

カロリーヌの絵本です。

今日はうちの子どもたちが大好きな「学校編」を紹介します。

大人の私たちが見ても笑えるかどうか、あとでぜひ意見を聞かせていただきたい。

 

表紙の犬はYoupi

黒板に「ユピ学校へ行く」と書いてあります。

花2本+花2本=ブーケ一束

可愛いですね。横からプフが何か言っている。

ユピは計算が苦手なようです。

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うちにあるのは1992年版です。他の版はあとでみましょう。

(ユピが手に持っている青い黒板ふきに注目)

 

*~~~~~*~~~~~~*~~~~~*~~~~~~*~~~~~~*

 

さてお話のはじまり。

(いつものように、絵は全部ではないし、直訳でもありません。念のため再度お断りしておきます。)

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今日から新学期。ユピは初めて学校にいきます。

いつもの仲間たちと学校で会えるのが楽しみです。

さ、急いで。チャイムが鳴っている。

優しい黒犬のボビは 灰色猫のミネにつきそっているし、いたずらっ子の黒猫ノワローは相変わらずふざけている。

白猫のプフは花束を持っています。

 

(教室で)

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先生「ちょっとおさらいしましょうね。わたしたちの祖先はなんという名前ですか」

ノワロー「ガリア人です。りっぱな髭をたくわえていました」

ユピーは黒板にガリア人と書いています。「それから、大きな耳を持っていました」と付け加えます。

「ちがいますよ。あれは羽がついたヘルメットなのです」と先生。

 

算数では「ネズミ1匹+ネズミ1匹は?」と先生に聞かれ、

「朝ごはん」と答えるユピでした。

地理では地球儀を見て

「ぼくんち、見えないよう」。

またまたノワローがふざけています。

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絵合わせではユピはいつになく優秀です。

ですが、ノワローにまたしても邪魔をされます。

ノワローの顔を見てくださいな。

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お絵かきの時間。

先生「あなたたちの目の前にあるものを描いてください」

目の前にあるもの・・・

赤いりんごです。

白猫のプフは

「色なら白がやっぱ最高」と言って白いりんごを描きました。

後ろに座っているユピはプフに言います。

「ねえ、じっとしてて。でないと君のポートレートがうまく描けないから」

 

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ユピの描いた絵を見た、先生のあきれ顔といったら。

(ここは子どもたちにすごくウケるところです)

 

お絵かきはもう終わりよ。さ、ノートを出して!

書き方をやるって?バンザーイ!

ユピはもうアルファベットを知っているのです。

 

おや、ノワローが紙飛行機を飛ばしてきました。

 

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大変だ、きっとあとでバツを食らいますよ。

(黄色いカバンからネズミが…!)

 

このあと体操の時間がありますが、省略しますね。

「学校編」はこれでおしまい。

 

*~~~~~*~~~~~~*~~~~~*~~~~~~*~~~~~~*

ほかの版の表紙

時代に合わせて絵も違うのがおもしろいです。

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最新版もいろいろあるみたいです。

黒板の下にぶら下がっている「黒板ふき」に注目。        

 

f:id:cenecio:20170205172435p:plain1966年

色が古めかしくてすてきです。

 

カロリーヌのなかで 学校の話は珍しいです。

たいていが余暇や行事や旅行・冒険の話なんです。

ところが文化の違う私たちがみると興味深いことがたくさんあります。フランスでは、黒板は水で濡らしたスポンジで拭きます。

表紙の絵ではユピが青い色のスポンジを持っていましたが、最新版の絵では、下の写真のような天然海綿の色のが黒板から下がっていますね。

 

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通学カバン

Rentrée scolaire : le bon vieux cartable Tann's ressuscité - 1 septembre 2012 - L'Obs

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カロリーヌに出てくるような通学かばんは今でも販売しています。

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Rentrée scolaire: Les bons plans pour les fournitures de la rentrée 2014 (cartable, calculatrice, cours de foot)

ノスタルジーを感じるでしょうね。

 

今は素材が軽くて丈夫で、色も明るくキャラクターがついているものが主流です。

どうしても流行に左右されますが、ハローキティは根強い人気があります。

下の画像検索でどうぞ。

photos cartable scolaire - Google 検索

終わります。

 

 

白熊も食べたがるベルギーワッフル、作ってみました。

そのほか ノルウェー

白熊さん、ベルギーにおいでなさい。

 

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今朝はこんな記事を見つけてすっかりご機嫌です。

ワッフルは世界中で食されていると思いますが、ヨーロッパの人はすぐにベルギーのワッフルを思い浮かべるようです。しかもリエージュ風とブリュッセル風を。

もちろんオランダやフランスやノルウェーのも有名でそれぞれにおいしいのです。どれもその土地にあった食べ方があるんですね。

これまで、shellさまと、そしてギアさまとはすでに1年前からワッフルの話をしてまいりました。ギアさまはご自分で作ったワッフルをブログ上で披露されましたし、作り方も丁寧に教えてくださいました。

また私も簡単ではありますが、ベルギーワッフルの写真を載せてきました。

cenecio.hatenadiary.com

cenecio.hatenadiary.com

cenecio.hatenadiary.com

 

リエージュ風とブリュッセル風の違いは上記の記事内で説明しました。

 

一人食堂さま(garigarigarikuson)

にも無理を言ってレシピをお願いしました。

こちらです。どうやらリエージュ風に近いようです。

米粉を使う所がおもしろいですね。

www.hitorishokudou.com

 

というわけで、ワッフルメーカーを買ってきて、一応レシピ(↑記事内↑)に沿って作ってみました。

 

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ところがですね、最初からうまく行くとは思っていませんが、案の定、イーストがちゃんと膨らまなかったのです。それと塩を入れるのを忘れた!(そそっかし!)

ワッフルシュガーは30グラム程度入れました。

娘や夫はそれでも喜んでおいしいと言って食べてくれました。

味はほんのりシナモン風味にしました。夫は「もう少し砂糖を入れてね」と次回に向けて要望を出してきました。

ええ、次はもう少しうまくやれると思います。

一人食堂さん、ありがとうございました。

 

ギアさまのレシピ

ギアさまは「ベルギーを旅してワッフルに惚れ込んだ、本間節子さんの本を持っているのです」と2種類、紹介してくれました。

①「イーストでふんわりブリュッセル風」


プレーン生地4〜5枚分
水・・・125ml
ドライイースト・・・小さじ1/2
砂糖・・・20g
卵・・・1個
薄力粉・・・60g
強力粉・・・60g
塩・・・小さじ1/2
無塩バター・・・30g
粉砂糖・・・適量
①ボールに水を入れ、イーストを加えて混ぜる
②砂糖、卵を加え泡立て器でよく混ぜる
③薄力粉、強力粉、塩をあわせ一度にふるい入れる
④泡立て器でよく混ぜなめらかにする
⑤湯せんで溶かしたバターを加えて、さらに泡立て器でなめらかになるまで混ぜる
⑥ラップをして1時間〜1時間半、量がふえてふんわりとし、泡が出てくるまで室温に置く
⑦予熱したワッフルメーカーで3〜4分焼き色がつくまで焼く
⑧焼き立てに粉砂糖をふって、好みのフルーツなどを添える

 

②「イーストでもっちりリエージュ風」


水・・・100ml
イースト・・・小さじ1
砂糖・・・20g
卵黄・・・1個分
強力粉・・・90g
塩・・・小さじ1/2
無塩バター・・・80g
薄力粉・・・90g
①ボールに水を入れイーストを加え混ぜる
②砂糖、卵黄を加え泡立て器でよく混ぜる
③強力粉と塩を一度にふるい入れ、泡立て器でなめらかになるまで混ぜる
④バターを小さめのボールに入れ、泡立て器でクリーム状になるまで混ぜる
⑤、③に④のクリーム状のバターを加えでなめらかになるまで混ぜる
⑥薄力粉を一度にふるい入れ、ゴムベラでなめらかになるまでよく練り混ぜる
⑦ひとまとめにしてラップをして室温で約1時間〜2時間、生地がふくらんで、だいたい倍くらいになるまで置く(一次発酵)
⑧打ち粉(強力粉)をした台に取り出し、軽くまとめ8等分に切る
⑨手で丸めて打ち粉をした台の上に少し間をあけて並べ、ラップして乾かないようにし、ひとまわり以上大きくなるまで発酵させる(2次発酵)
⑩焼成(上と同じ)

ギアさま、ありがとうございました。ぜひこれにそって作ってみたいと思います。

 

楽しいワッフルメーカー

ヨーロッパで売っている製品の一部です。

子供たちも手軽に作れますね。

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Coffret 100% chef : le gaufrier – La Grande Récré : vente de jouets et jeux Ecoiffier

 

 

オランダでワッフルといったらこれ!

さぴこさんが先月記事を書いていました。

日本でも普通に売っているなんて知らなかった。

 

sapic.hatenablog.com

私にとってはアムステルダムの空港で買うお土産であり、オランダ帰りの人が手渡してくれるもののひとつです。

ストロープワッフル(stroopwafel)は2枚の薄い記事の間にシロップ(stroop)を挟んだものです。詳しくは→ ストロープワッフル - Wikipedia

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グレーテルのかまど(NHK Eテレ)ご存知ですか?

前はよく見ていたんですけど、最近離れていたら2月6日にワッフルをやったようで、もうがっかり!どなたかご覧になりましたか。

ノルウェーの国民的絵本の主人公「スプーンおばさん」のワッフルを作る、というコンセプトです。ナビはこちら瀬戸康史くん。

 

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www.nhk.or.jp

至れり尽くせりの丁寧さでレシピが載っています。

ぜひちょっとだけでも覗いてみてくださいね。

こんなハート形の焼き器もほしくなっちゃう。

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下は「スプーンおばさん」ノルウェー版です。

絵がとってもすてき!

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日本では

『小さなスプーンおばさん』

作: アルフ・プリョイセン
絵: ビョーン・ベルイ
訳: 大塚 勇三
出版社: 学研

出版社からの絵本紹介:

ある朝、目がさめたら、いきなり茶さじくらいに縮んでしまうスプーンおばさん。気丈なおばさんは少しもあわてず、てきぱきと困難をきり抜けていく。気のやさしいご亭主との静かな暮らしのなかでおこる珍事件を明るくユーモラスに描いた物語。

 

みなさんもワッフルを作られたら、ブログにアップしてくださいね。

ではまた。 

カロリーヌの公現祭「王様のケーキ」

フランス

1月6日カトリックの祝日です。

公現祭エピファニー)といいまして、ガレット・デ・ロワという「王様のケーキ」(パイのほうが近いかな)を食べます。

切り分けられたケーキの中にそら豆(*フェーヴともいう。過去記事参照)が入っていたら、その日はいちにち王様になれます。紙でできた金色の王冠をかぶってね。

 

今日は1月30日で、1月も終わっちゃいます。

その前に急いでこの愛らしいお話を書いておきます。

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Caroline fête les rois  – 発行年:1993
著者: Pierre Probst 

出版社:HACHETTE

 

カロリーヌの絵本シリーズについては以前、簡単に紹介しました。

cenecio.hateblo.jp

ではだいたいの話を。絵も全部ではありません。念のため。

 

 カロリーヌは大忙し。 

バターに卵、小麦粉・・・えいやっと!

右にいるのはキッド(ライオンの子)で、

左のボビ(犬)がそら豆を手渡します。

中に入れなくちゃ。

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できあがったら、みんなでいただきます。

切り分けると早速、縮れ毛の子犬のユピーが

パクッとひとかじりしました。

「ぼく、そら豆をのみ込んじゃった!」

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まあ大変。

飲み込んでしまったらお話になりませんね。

ぶち壊しです。

困ったな、もう小麦粉がないし。

 

そこでケーキ屋さんで買ってくることにしました。

それにはお金がいりますね。

みんな自分の貯金箱からお金を出し合いました。

白猫のプフとユピーは、大きなケーキを買ってきました。

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そら豆が当たったのは誰でしょうか。

ぼくだよ、とキッドが得意げに言います。ほら、見て!

ところがプフも同時に言うのです。

ぼくも。ほら・・・歯のあいだにはさまってるんだ。

そんなことってあるでしょうか。ケーキに二つのそら豆なんて?

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カロリーヌは歯医者に電話をかけます。

先生、緊急なんです。そら豆が歯に挟まっているんです。

 

歯医者さんがプフの口の中から取り出したもの

それはなんと ルビーでした。

ケーキ屋さんへレッツゴー、です。

 

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ケーキ屋さんの喜びようといったら!

指輪のルビーがはずれて、ケーキの生地に入ったのですね。

どこでなくしたんだろうと思っていたんだよ。

 

ケーキ万歳 王様万歳!

そうだ、お礼に大きなケーキを作ってあげよう。

 

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 今度は八匹がそれぞれ王冠をかぶり、みんなが王様です。

なんてすばらしい日でしょうか。

このルビーの話は長く語り継がれそうですね。

 おしまい。

 

 

*我が家のフェーヴのコレクションを紹介しています。

興味のあるかたはどうぞ。

cenecio.hatenadiary.com

 

 

*2012年に「カロリーヌの展覧会」があったようで、そのポスターと、訪問したことををブログに書いているフランス人のサイトです。

私の忘備録として貼り付けています。

f:id:cenecio:20170126132337p:plainポスター

parfumeuse.canalblog.com

 

追記:ドイツ メルケル首相と王冠をかぶった子どもたち

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月にノーと言ったキツネ

フランス

『 月にノー(NON)と言ったキツネ』

フランスの本です。

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タイトル:Le Renard qui disait non à la lune 

発行日: 1 octobre 1974
著者: Jacques Chessex   挿絵:Daniele Bour

出版社 : Grasset

 

新しいキツネ本といえるかな。

1974年発行のフランスの(絵)本です。出版が新しいという意味ではなく、キツネはよく物語の主人公になりますが、たいてい、ほかの動物たちに対して”悪役”ですよね。しかしこの本の主人公は、現実的で自立した、しかも詩人のキツネです。

ちょっと下の写真を見てくれればわかると思いますが、とにかくテキストが多い。行間も空けずにぎっしりお話があります。それで絵本とは呼べず、物語になっています。

 

あらすじをざっと紹介します。

キツネのルールーは森の奥深くに住んでいます。明け方になると、獲物を探しにやってきて…まあ、絵の通りですね、鴨や鶏を仕留めます。

 

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ルールーは美しい自然のなかで、幸せに何不自由なく暮らしています。

特に気に入っているのは 木立の間から仰ぎ見る 黄色く輝く

ええ、月がとっても好きなのです。

月は日ごとに形を変えていき、そのたびに見惚れて倦むことがありません。

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ある日、仲間たちから「森の空き地に集合」と呼び出しがかかります。行ってみると、熱に浮かされたように若者キツネがまくし立てています。

なんのことかと思いきや、この森の地味な生活を捨てて、月へ移住しようというのです。新しい土地で狩りをして冒険をして もっと金持ちに もっと幸せになるんだ、と。

ルールーにも誘いがかかりますが、まったくご免です。自分はここの生活がいいんですから。ところが驚いたことに、両親や家族や、知り合いの全員が月移住に賛成です。そして準備は着々と進み、皆はロケットに乗り込んで出発していきました。

 

ルールーはいつものように、モミの木のあいだから月を仰ぎ見ます。

いつになく蠅のぶんぶんいう音や カッコウのくーくー鳴く声がくっきりと聞こえてきます。いつになく日陰は蒼く涼やかに感じられます。小川には小さな泡がぷくぷくと浮いて輝いてきれいです。

 

孤独なルールーは 月を愛でる歌をうたいます。

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月よ 麗しき月

プラム色の夜のとばり

きみの陽気な黄色が 大好きさ

天空の チーズに あいさつするよ

月よ 月

ぼくは 茶色い垣根を かけ抜ける

クレソンが のどを潤し

苺のにおいが 漂うよ

蜂蜜パイの 月に あいさつするよ

 

 

さて月に行った仲間たちはどうしたでしょうか。

ええ、そうなんです。そこには森も動物も何もなかった。本当にがっかりで悲しくて 涙がこぼれます。

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そしてやはり森に戻ってくるのです。

着地は「池」という約束でした。

 

ルールーは森の動物を集めて、池の周りで待ちます。

こんなにいろいろな種類の動物がいたのか、と思うほどたくさんの動物たちが集まります。  

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 穴熊、ケナガイタチ、カワウソ、テン、山猫、オオヤマネコ、

コエゾイタチ、フェレット、ムナジロテン、

それから年老いたオオカミ赤ずきんを探しているようです

                注:本当に↑このように書いてあるのです。

 

動物が多すぎて全部書きませんが、うさぎやハリネズミまでいますね。

とにかく全員集合でお迎えするわけです。

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 そうしてルールーにいつもの森の平穏な日々が戻ってきました。

月を愛でる生活、里に下りて獲物を捕まえる生活です。

ルールーは 森の生活を満喫しています。(終わり)

 

 

挿絵画家 

Daniele Bour ダニエル・ブールさん。

このかた、フランス人で知らない人はいない。いたらモグリです(笑)って言っていいのではないでしょうか。

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Rencontre. On a retrouvé la maman de Petit Ours Brun

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 このようなくまちゃんが主人公の、絵本やアニメ、塗り絵やグッズが本当にたくさんあるんです。フランス人はみんな小さいころ持っていたはずです。

 

お話を描いた人

 Jacques Chessex シェセさん。(1934-2009)

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L’Ogre de Jacques Chessex | Pasion De La Lectura

スイスの詩人で、フランス語で著作を残しました。

有名な詩の賞をもらった人でもあります。

 

月は遠くにありて愛でるもの

この話のテーマでしょうか。

 

f:id:cenecio:20170126102042p:plainf:id:cenecio:20170126102154p:plainWIKIより

 

現代の私たちがこの本を読んでもおもしろくないのは、1970年代の「宇宙」や「月探検」への憧れを共有しないからです。

スイスの詩人さんはこのブームを冷ややかに見つめ、今の暮らしの良さを、地に足のついた平穏な日々を送れるしあわせを、子どもたちに見つめなおしてもらおうと思ったのでは。子どもと話しながら反応を見ながら読むのでしょうか。

 

それにしても饒舌な本でした。私があまりにざっくりまとめすぎて、うまく伝わらなかったこと、お詫びします。

 

 

 

『森は生きている』 -2-

ロシア 日本

前回の『十二の月たち』の続きになっています。

 

このスラブ民話は、日本でもいろいろな形で知られています。

たとえば私の世代の人間は『森は生きている』(ソ連、1943年)という戯曲作品として知っています。

学校劇でこれをやった人たちもいます。

また子供向けの劇団公演を見たことがある人もいますね。

多くの人はまず、岩波のこの本を思い浮かべるでしょう。1953年発行です。

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森は生きている (岩波少年文庫) 
サムイル マルシャーク (著), Samuil Marshak (原著), 湯浅 芳子 (翻訳)

 

こちら、ナンさまが前回記事に寄せてくださったコメントです。

ナン (id:majyonan)

このお話、大好きです。暗い森の中で火を囲んでいる12の月たちに出会うシーンほかとても印象的でした。わたしはマルシャーク「森は生きている」を岩波少年文庫で読みました。懐かしいです。出久根育さんの挿絵の作品もぜひ読みたいです。ご紹介下さりありがとうございます。

1日前

 

 

『森は生きている』はけっこうドタバタしているんです。

継母や姉、わがままな女王や彼女に振り回される付き人たちなど、登場人物があまりに滑稽に描かれるので、子供たちもクスクス笑い、かと思えば高価な褒美がたくさん出てくるため、子供たちも目をまん丸くする。速い展開に引き込まれ、最後に主人公の女の子が誰と結婚するかわかった時には満面の笑顔です。ユーモアに溢れて、とっても楽しめる作品です。

 でも今の子供たちはどうなんでしょう。おもしろく思ってくれるのかなあ。

 

指輪をもらうシーン

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こんな風に歌もたくさん挿入されています。

ロシア語はわかりませんが、訳者はよく訳しているんじゃないかと思います。

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ままむすめ(絵本ではマルシュカ)が誰と結婚するか、ここでちょっとわかってしまいましたね。すみません。

 

アニメ映画

1980年には『世界名作童話 ・森は生きている』というタイトルで、「東映まんがまつり」枠内で公開されました。

 

www.youtube.com

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主人公ままむすめの声は大竹しのぶ。一月の月は小林清志、そのほか兵士の声が役所広司とか、豪華ですね。

 

『森は生きている』の作者

サムイル・ヤコヴレヴィチ・マルシャーク(Samuil Marshak 1887-1964)

ロシアでは有名な児童文学作家です。ユダヤ人だったけれど、非常に才能豊かだったので特別待遇を受け、創作活動に打ち込めたそうです。

原題は『十二月』(ロシア語: Двена́дцать ме́сяцев)。

f:id:cenecio:20170103125447p:plain現代のロシア語の本。http://read.ru/id/3709424/

 

マルシャークは多くの作品を書きました。

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子供たちのアイドル。

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Самуил Яковлевич Маршак. - ЯПлакалъ

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切手にもなっているほどの人なんですね。

 

いろいろな翻訳+挿絵画家のバージョンがあります。

たとえば

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森は生きている―12月(つき)のものがたり (斎藤公子の保育絵本)  – 1986/12
マルシャーク (著), 斎藤 公子 (編集), エリョーミナ (イラスト), 林 光、出版社: 青木書店

 

民話や昔話には、意地悪な継母や醜く性格の悪い姉(たち)が出てくる話がたくさんありますね。最後は罰がくだって、ちょっぴりかわいそうな羽目になります。

『森は生きている』で作者マルシャークは継母と姉をどうすると思いますか。なんと、犬に変えてしまうんです。三年という期限付きでね。心を改めたら人間に戻してやることになっています。

どうですか、この結末は?私は二人を気の毒に思い、ほかの解決法があるでしょう、と思っていました。離れたところに住まわせるとか、ダンナさんを見つけてやるとか。(←余計なお世話?)

 

 『十二の月たち』はこれで終わり。 

おつきあい下さり、ありがとうございました。

十二の月たち -1-

チェコとスロヴァキア 日本 ロシア

有名な民話です。

といっても日本ではどうでしょう。どのくらい知られていますかね。

人によるかもしれません。そのことはあとで説明します。

ロシアやチェコ・スロバキア地方では広く知られる民話で、様々なバリエーションが存在します。ちょうどシンデレラや赤ずきんと同じように、地域や国によって細部が異なるんですね。

 

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十二の月たち

(世界のお話傑作選) 大型本 – 2008/12
ボジェナ ニェムツォヴァー (著), 出久根 育 (著, イラスト)  偕成社 (2008/12)

 

挿絵の出久根 育さんには心底驚かされます。

前にこちらの本を扱いました。

cenecio.hateblo.jp

cenecio.hateblo.jp

同じ人の絵とは思えないですね。

シュールな『あめふらし』は何度も何度も読みました。いえ、絵を鑑賞しました。中毒性があるようです。

この『十二の月たち』は ボジェナ・ ニェムツォヴァー(Božena Němcová、1820 - 1862)というチェコの女性作家の再話です。(ニェムツォヴァーは岩波の『おばあさん』がうちにあり、学生時代に読みました。下のほう、参照のこと)

 

 『十二の月たち』のはじまりはこうです。

心のきれいな、そしてとびっきり美しい娘マルシュカは、森のなかの一軒家に継母と姉と三人で暮らしています。

はは~、なんとなく話がみえてきたなと思うでしょう。その通りで、継母は自分の娘は可愛がりますが、家事やきつい労働は全部マルシュカにさせます。それどころか何とかして追い出そうと企みます。

一月のある日のことです。

「マルシュカ、山からスミレの花をつんできてちょうだい」と言いつけます。こんな一月の雪の中にスミレが咲いているわけないのですが、摘んでもどらないとただじゃおかないよと言われます。

寒さに震えながら、山頂までやってくると、たき火が見えるではありませんか。そしてまわりを囲んでいるのは…。

 

表紙の絵から想像がつくように、12人の月がいたのです。一月の月は白い髭をたくわえ、杖を持つ、威厳に満ち満ちたお方です。マルシュカがわけを話すと、三月の月(こちらは青年)を呼びます。

 

 絵の左が三月です。

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このように話は進んでいきます。

興ざめするので筋は言いません。

ストーリーと絵を楽しんでください。

 

絵を見て最初に感じたのは、宗教画みたいだということ。

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キリストや使徒たち、長老や賢人ふうの老人もいれば、フラ・アンジェリコの絵に出てきそうな天使も。

 もうひとつの大きな特徴は厳しい自然です。過酷な冬の風景、雪や風で凍った景色、何百と描き込んだ針葉樹などが雄大に描かれています。

出久根さんはチェコにお住まいなので、あちらの自然をよく観察していると思いました。

 

 

参考:

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おばあさん (岩波文庫 赤 772-1) 文庫 – 1971/9/16
ニェムツォヴァー (著), 栗栖 継 (翻訳)

 

わがやにあるのは1977年5刷りです。

はてなでこの作品に触れている方がいらっしゃいましたので、貼っておきます。

ボジェナ・ニェムツォヴァー作『おばあさん』(栗栖継訳)を読む - edel_weiss306の読書・旅日記/

 

著者

ボジェナ ・ニェムツォヴァー(ウィキペデアより)

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チェコ語の本の挿絵。ニェムツォヴァー博物館より。

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BABIČKA | Muzeum Boženy Němcové

 続きます

 

 

お知らせ

前回の記事『水の中のナイフ』ですが、片付けをしていたらポーランド映画祭のパンフレットが出てきました。写真を載せてあります。よかったらご覧になってください。

水の中のナイフ キツネ-3-  追記

そのほか

イヌとカササギの物語

 

キツネを拾う

イヌ(アンジェイ)とカササギ(クリスティーナ)は週末を湖ですごすために、車を走らせている。途中ヒッチハイクの若き青年、キツネを乗せてやる。キツネは普段乗せてもらうトラックが週末は走らないため困っていた。

イヌは湖にヨットを所有している。成功したスポーツ記者で、若く美しい妻と裕福な暮らしを送っている。気紛れからキツネをヨットクルージングに誘う。一晩ヨットで一緒に過ごし、キツネは翌朝発つということに決まった。

 

密室の三人

イヌとカササギ夫妻はキツネに親切だ。イヌはヨットに精通しており、操縦の基本をキツネに教えるが、どことなく尊大な命令口調であるのは否めない。キツネの未熟さ、性急さ、素朴、無知、粗削りなところを見ては優越感に浸るイヌ。

カササギは落ち着いた肉感的な女性で、忠実な妻でありキツネにも優しい。

キツネもクルージングを満喫している様子。ただ、泳げないからと言って水には入らないが。食事や酒を楽しみ、船乗りがよくやるという、棒を一本ずつ抜いていくゲームをして夜のひとときを過ごす。

キツネはナイフを持っている。折りたたみ式の美しいナイフ。宝物のように大切にしている。森の中など徒歩で移動するには、藪を開いたり、ものを切ったりするのに不可欠なものだ。キツネはナイフゲーム(*)をしてみせる。広げた指の間を次々に高速で刺していく遊びだ。

ナイフは話の中で何度も登場する小道具で、不安と緊張と暗示をもたらす。

Knife game - Wikipedia

 

ドラマ

朝まだきの湖畔。カササギはヨットの上に出て座っている。キツネも目が覚めてそこへ出てきた。しばし言葉をかわす二人。

遅れて目が覚めたイヌは二人がいないことに気づく。ナイフが見える。それを隠す。

それから外で二人と合流する。イヌの心にさざ波がたつ。気に入らないのだ。なんで妻と二人でいる?小ばかにしやがって。ボスは俺だぞ。メンツ丸つぶれだ。怒りと嫉妬が膨らむ。

キツネに甲板掃除を言いつける。キツネは戸惑いながらも従う。急に主人面をしてキツネを顎で使い始めたイヌに対し、カササギは反発する。

キツネがヨットを降りるときが来た。しかしナイフがない。ナイフを返してくれとイヌに言う。イヌは嘲るようにポケットから取り出し、笑いながら取ってみろと挑発する。カササギはイヌの子供じみた意地悪な仕打ちに腹をたてている。

ナイフが手から落ちて水の中へ。なじるキツネ。高笑いするイヌ。キツネがイヌになぐりかかる。が、イヌのパンチを受けてキツネは湖にどぼんと落ちてしまう。

キツネは泳げないのだ。カササギは心配する。二人で水に飛び込んで探すが、キツネを見つけることはできなかった。ヨットに戻った二人は一気に感情を爆発させる。これまでのマンネリ化した穏やかさはどこへ。カササギは一気に批判や不満を吐露する。特にイヌが、どうせこのまま隠しても誰にもわからないだろう、と言い、キツネの手荷物を水に放り投げようとしたときは…。

結局イヌは警察に連絡することにし、岸まで泳ぎ出した。その一部始終をブイにつかまって見ていたキツネは、悠然と泳いでヨットに戻る。そう、泳げたのだ。

カササギはキツネの頬をたたく。その後、二人のやりとりを通して、キツネの身上と、かつては貧しく苦労したイヌとカササギの過去が明らかになる。

どちらからともなく唇を重ねる二人。そうして二人で船室へ。

 

イヌ

カササギはヨットを岸辺につけ、そこでキツネを降ろし、すぐさまイヌが待つ桟橋へ向かう。イヌは泳ぎ着いてそこで待っていた。裸では警察に行けないから。

車を走らせると、目の前に「警察署」の案内板が見えてきた。カササギはUターンして、とイヌに言う。

ーキツネは生きていたの。ちゃんと泳げたのよ。彼が戻ってきてから、一緒にあなたの名前を大声で呼んだけど届かなかった。わたし、浮気したわ。

カササギの言葉を信じないイヌ。

ー君の言葉を信じて家にもどり、明日、新聞を開くと「若者の水死体が…」という記事を見るんじゃないか。

本当の話だといっても、なかなかイヌは信じようとしない。イヌは警察に行くのか、行かないのか…わからないまま、この話は終わる。

「margaret wild fox」の画像検索結果

http://readingaustralia.com.au/lesson/fox/

 

マミーさん、shellさんのコメントを読んで、思い出しました。これは映画『水の中のナイフ』です。登場人物はたったの三人。場所は湖のヨット。密室ならぬ密船劇です。

サスペンスと画像の美しさ。30年くらい前に「ポーランド映画祭」で見たのですが、今も忘れられません。

 

『水の中のナイフ』(Nóż w wodzie):ロマン・ポランスキー監督・脚本による1962年ポーランド映画。ポランスキー監督の衝撃デビュー作品。アカデミー外国語映画賞ノミネート。波瀾万丈の人生はこちらで。

ロマン・ポランスキー - Wikipedia

 

写真を載せておきます。

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Nóż w wodzie (1961). Roman Polański – Toster Pandory

http://szczere-recenzje.blog.onet.pl/2011/04/17/146-noz-w-wodzie-knife-in-the-water-1961/

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http://film.onet.pl/noz-w-wodzie

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ロケ地の湖、現在の様子。ウィキペデアから。

 

終わり

 

追記:2017年1月

ポーランド 映画祭パンフレット

片づけをしていたら見つかりました。とってあるとは思っていなかったので感激しました。

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上の写真

右:1979年

左:1981年

 

下の写真

『水の中のナイフ』解説

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キツネ再び

オーストラリア

あれから2週間がたち、もう一度『キツネ』について。

 キツネ Fox (Margaret Wild & Ron Brooks) - 子供の領分 Le Coin des enfants

 

キツネ 大型本 – 2001/10
マーガレット ワイルド (著), ロン ブルックス (イラスト)

出版社: BL出版 (2001/10)

 

動物が擬人化されているところは、ちょっと「イソップ物語」や「ラ・フォンテーヌ寓話」を連想させるが、教訓めいたところはない。open endingというのか、読者の解釈の自由に任されているところは大きな特徴だと思う。そして付け加えるなら、happy endingでは全然ない。

 

絵本であること

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Look! A New Exhibition on Illustrated Books — The Wheeler Centre

 

みなさんのコメントおよび、マミーさんのブログ記事、shellさんの数回にわたる「キツネ考」を読ませていただき、大変参考になった。お礼を言いたい。

これはまず絵本なので、「作家さんにとって、子供向けとか大人向けとか関係なく、ストーリーを最もいい形で表現できる方法が絵本…」という志月さんの指摘から始めるべきだろう。

『キツネ』はタスマニア在住のRon Brooksによって描かれるべき絵本であった。オーストラリアの山火事や荒れ地、自然の過酷さや美しさなど、あの地で生きている者にしか表現できないものがあると思う。

そのうえでBrooksは、作家Margaret Wildのメッセージを受け取り、作品世界を作り出すのであるが、その強烈な個性といったら…。手書きの異様な文字はもちろんのこと、どのページも私たちの目を引き付け、逸らすことを許さないのだ。

色はなんといってもキツネの赤(オレンジというべきか)、そして補色となる美しい青が印象的で、そのあと茶系統や灰色も背景として見事におさまっている。

キツネは肢体の美を誇るかのように、横に縦に大きく長く描かれる。表紙もしかり。(前回の記事の写真参照)。豊かなふさふさの艶やかなファー。完璧な容姿に見惚れるばかりだ。森林火災から逃げのびてきたイヌやカササギと違って、キツネの外見には何一つ「傷」がない。外見には。

イヌとカササギー この組み合わせは意外であるが、両方ともケガを負い、ハンディキャップを持つという共通項がある。片目イヌと飛べないカササギ。

しかし互いに補完し助け合って友情を育み、しあわせな日々を送っていた。お互いがなくてはならない存在であるから、絆も健常の者同士より強いのではないだろうか。

季節は夏から冬へ、そして春が来たころ、キツネが登場する。目をギラギラさせて、赤いファーをまとっている謎めいたキツネ。

ネットで原文を読んでみると

・・・flickers through the trees like a tongue of fire

 

木々の間から赤い体がチラチラと見え隠れしている。それはまるで「火の舌」のようだとある。不気味だが美しい比喩だ。重大なドラマが起きることを読者に予感させる。西洋ではふつう、キツネのイメージは大変悪く、悪や狡猾の象徴であることが多いからだ。

 

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しかしイヌは警戒もせず温かく受け入れる。

ステレオタイプではあるが、犬はここでは疑いを知らぬ「善良」そのものとして描かれる。当初カササギを手厚く介抱してやり、心の傷も癒してやったイヌ。献身や心の優しさは賞賛すべき資質だ。しかし愛する者を守るには、優しさだけではだめなんだということも私たちはここで学ぶ。

カササギは危険を察知する敏感さを持っていた。五感を使って感じ取るのだが、その毒にも気づいており、不安になる。

・・・fill the cave a smell of rage and envy and loneliness

 

 洞穴を満たす怒り、妬み、そして孤独。

孤独なキツネにとって、イヌとカササギの友情は我慢ならない。見ているだけで腹がたつ。なんで奴らだけ幸せなのだ!

 

マミーさんが書いている。

キツネの羨望と嫉妬、それゆえの行動。
思わず目をそらせてしまいたくなる情念ですが、これも確かに人間の感情のひとつだと思うと、その悲しさに身が震えます。

焼けるような、あのオーストラリアの野火の如き、燃えるような「羨望と嫉妬」なのである。これを鎮めるにはカササギの最も弱い部分を攻めるしかない。キツネに愛はない。言葉巧みに誘う。自分の手管に自信もあるだろう。

カササギは欲に負けてしまった。イヌの背に乗って走っているとき、こんなのは、飛ぶことじゃない、と思ってしまう。わたしは飛びたいのだ。かつて羽があったときみたいに。残酷ではあるが、みすぼらしい片目イヌと美しいキツネとを比べてもみただろうか。

イヌを裏切り、友情と幸せの日々を捨てた代償は大きかった。つまりイヌの待つ洞穴に、生きて無事帰れるかわからないほど遠くまで来てしまったからだ。後悔してなんとか贖いたいと思うカササギだが。(open ending)

 

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(現在、背景画像にしている絵です。ピンタレストから借りています)

 

Jさまはこのように書いている。

他の方も書いていますが、「絵本=子供向けの寓話」・・と言うステレオタイプを一発で打ち砕く、破壊力のある一冊です。

でも、この本を通じて著者の発するメッセージは「子供への問題提起」とは、考えられないでしょうか?

例えば、イジメ。 なぜイジメるのか? イジメられたらどんな思いか? キツネとカササギは、そのメタファーではないでしょうか?

 おっしゃる通り、「問題提起」は子供の年齢に応じて、そして私たち大人にも広く投げかけられている。イジメ問題はよい例である。

J.パーキンソン (id:PSP-PAGF)

Jさま、ありがとうございました。

 

私は何度もこの本を読み返してみて、子供には8歳くらいからが適切かなと思っている。人は心の闇、深いところに潜む悪意を持っているのだ。私たちの心にキツネはいると思う。そのことを子供と率直に話してみたらいいと思う。

 

この話から学ぶこと

この三角関係にもう一つ「猜疑心」(さしずめイヌの役柄)が加わったら、シェイクスピアの悲劇になるのかもしれない。人間のもつ本質的な感情ー 愛、嫉妬、裏切り、後悔、欲望、猜疑などはドラマのエッセンスであるから。

とはいってもこの話はそんな悲壮なものではなく、最後はわずかだが希望を残している。結局のところ、キツネの話ではなく、カササギの話だった。刺激や新奇なものに心惹かれたカササギ。イヌとの生活に少し退屈してだろうか。仮初めの喜び、それは偽りの喜びだった。大切なもの、イヌとの友情を裏切ってしまった。そしてやっと自分にとって本当に大切なものがわかったのである。高くついたレッスンであるが、私たちはカササギの帰宅を祈り、喜ぶイヌの顔を心に描こう。

 

新しい寓話・現代の寓話『キツネ』

終わります。

 

 著者についてはこちら(英語)

alchetron.com

アン・モーティマー(Anne Mortimer)の世界~クリスマスの絵本~

イギリス アメリカ

わたしね、白状すると、可愛いものが大好き!

小さくて可愛くて色がきれいなもの。

みなさんだってこどもの頃、自分の気に入ったものを集めたり切り抜いたりして、宝物として、箱や机の引き出しにしまっておいたのでは?私にとっては絵本だって同じ。

でも今は恥ずかしいのでそういう趣味を隠して、オトナのふりをしていますけど。

ゆうべ、さぴこさんの記事を読んだら、そんな子供時代の楽しい記憶がさーっと、波が打ち寄せるように体の中に広がってきました。

 

さぴこさんの記事はこちら。

sapic.hatenablog.com

さぴこさんはもう、何というエネルギーでしょうね。9000字の記事ですから(@_@)

15冊の本に関しては、私は半分くらいしか知らなくて、いずれ他も読んでみたいと思います。

 

今日取り上げるのは

13 こねこのみつけたクリスマス

14 ちいさなねずみのクリスマス

さぴこさん、なんてことを!

よりによって、アン・モーティマーのねずみねこの本をダブルで選ぶなんて!

悶絶死する人が出たらどうするんでしょう。

 

画像お借りします。

f:id:cenecio:20161220151955p:plainほるぷ出版

 

f:id:cenecio:20161220152016p:plain徳間書店

 

挿絵を描いた人 アン・モーティマー

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Anne Mortimer

イギリス・サマセット在住。王立細密画家協会会員で、野生植物や花の絵が専門とのこと。グリーティングカードやカレンダーの挿絵などでも有名です。

絵本は猫の一連の本が大人気で、猫を描かせたら右に出る人はそういないと言われているそうです。

ほかの本の例です。

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13 こねこのみつけたクリスマス

子猫が五感を使って、冬の情景とクリスマスという一大イベントを経験する話です。

もう読んでもらう以外にはありません。解説するのは野暮なんですね。

猫の髭や毛の一本一本まで細かく描かれています。表情や肢体など、猫を本当によく観察しています。子猫の好奇心や興奮がよく伝わってきます。

 

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おもしろいのは、左頁だけにお話が書いてあるんですが、あたかも一枚の絵の中央部分に柱状のテキストボックスを入れたようにしてあること。

 

お話を書いたのはかの有名なマーガレット・ワイズ・ブラウン(Margaret Wise Brown 1910 - 1952、アメリカ)です。

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「お話」と書いてしまいましたが、むしろ詩のような感じで、これをブラウンは「幕間劇」(インタールード)と呼んでいるそうです。

そして半世紀もあとに、アン・モーティマーによってすばらしい挿絵がつけられ、もっと豊かさを増した本は、この時期に子供たちの手から手へと渡るのです。

 

私がここで思い出すのは、やはり同じイギリス人のこの作家。

フランス語版を持っているのです。短いメモ的な記事です。

cenecio.hateblo.jp

 

14 ちいさなねずみのクリスマス

表紙を開くとこれです。

わあ、可愛い!なにしてんの?と子供たちが一斉に声をあげるところです。

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いや、表紙からしてもうワクワクしてました。

さっきの猫は人間と一緒だけど、ねずみはそうじゃないみたいだ、と子供たちは予感するのです。

 

人間の家に住んでいるねずみたち。人間のいないクリスマスイブの日、まるで人間がするみたいにクリスマスを楽しみます。

主人公はさっきのステキな王冠をかぶった子です。

この子が大はしゃぎなんですが、

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小鳥のお客さんをちゃんともてなしたり、

 

たくさんあるご馳走に迷ったり、

 

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仲間とクリスマスの歌を合唱したり。

 

するとシャン シャン とそりの音が空に聞こえます。

 

 

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ねずみもちゃんとサンタさんからプレゼントをもらいました。

中身は?

もちろん教えるわけにはいきません。

ご自分で確かめてくださいね。

(絵本はここで終わりです)

 

ねずみ好き

我が家はハムスターをたくさん飼っていたので、ねずみが大好きです。

1994-95年フランスへ家族で行く時は、一匹ずつしっかりしたお宅を選んで里子に出しました。

その当時の写真をお見せします。

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これはとても気に入っている写真です。

 

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ふつう食べ物はいったん頬袋に詰めるはずなのに、この子はこたつにでも入っている感じで寛いで豆を齧っています。

 

おしらせ

読者が増えたので、はてなスターとコメント欄、復活しました。

次回は「キツネ」の続きをやります。

みなさん、前回はコメント欄で熱く熱く語ってくれてありがとうございました。

Jさままで飛び入りしてくださいました。みなさんのコメント、一度目を通しておいていただけるとありがたいです。

ではまた。

キツネ  Fox (Margaret Wild & Ron Brooks)  

オーストラリア

キツネ

マミーさんから教えてもらった絵本です。

前回『きつねのかみさま』を扱ったので。

本当に教えてもらえてよかった。自分では絶対にたどり着けなかったから。

私の絵本との出会いは幾分受動的ですが、それでいいんだと思っています。

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2004年出版のオーストラリアの絵本です。

イラストのRon Brooksにはやられたなあ。ガツンと頭を一発叩かれたような。しかも年末にこの衝撃ですよ。いやあ、参った!

絵も手書きの文字も凄かった。異様な手書きの文字がただ事ではない雰囲気を醸し出し、ザラザラとした気持ちで読み進むことになります。

 

表と裏の表紙いっぱいの赤いキツネ(上記)、こっちをじっと見ている。後ろには荒れ野が広がっていますが、色調が暖色のせいで特に寂しい感じは受けないです。ええ、今のところは…。残念ながらストーリーにはどうしても触れてしまいますね。

 

おはなしは・・・

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https://s-media-cache-ak0.pinimg.com/originals/3e/d5/ad/3ed5adcb1f712c87040ef2345a90e1ad.png

イヌは、森が焼けてケガをして飛べないカササギを口にくわえ、

介抱してやろうとねぐらの洞穴まで運んできます。

カササギは、余計なお世話だ、自分はどうせ飛べない、と言います。

するとイヌは、自分も片目が見えないんだと答えます。

一緒に暮らすうちに互いがかけがえのない存在になっていきます。

カササギはイヌの背中に乗って林や茂みを駆け回ります。カササギはイヌの目になり、イヌはカササギの「羽」になるというわけです。

 

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月日が流れ、冬が過ぎ、春になったころ、一匹のキツネが現れます。

カササギは不気味さを感じ取るのですが、イヌは一緒に暮らそうと迎え入れるのでした。

キツネの体、すごいですね。まるで通せん坊するみたいな、暗示めいた描き方でうなりました。

 

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カササギはキツネを警戒し、その目を恐れます。(ここだけ原書のページを借りています)

夜になるとキツネの匂いが洞穴いっぱいに広がります。

怒りと妬みと孤独の匂いが。(訳)

rage, envy, loneliness!

ところがイヌはちっとも危険を感じておらず、カササギの忠告にも耳を貸しません。

キツネはカササギを誘います。自分はイヌより速く走れる、まるで「飛ぶ」みたいに。

三度目でカササギは折れてしまい、キツネの背に乗り林を駆け抜け、これこそ飛ぶことだ、と有頂天です。

森を抜け、赤い砂漠まで来ました。するとキツネはカササギを振るい落とし、言い放ちます。

おまえもイヌも、ひとりぼっちがどういうものか、わかるだろう、と。

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さっきのキツネと肢体が似ていますが、目は冷たく光っています。

 

 カササギは打ち砕かれた思いで、ここで死んでしまいたい気分です。

しかしイヌが目覚めたらなんと思うだろう、自分がいないことに気づいたら…。

カササギは立ち上がり、遥か遠くのわがや、洞穴目指して一歩一歩進んでいくのでした。

(ここで終わります)

 

写真は10周年記念版。

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An Illustrated Guide: Fox written by Margaret Wild, illustrated by...

 

絵本ですから子供も読みますよね。子供向けの本ではふつう、人は間違ってもいい、失敗してもやり直せる、と前向きなメッセージを送るものです。

しかし私たち大人は、小さなミスで大切なものを失ってしまうことがある、しかも永久に。人間関係のちょっとしたほころびで、悲劇や不幸のどん底に…ということだってあるとわかっています。人との関係はとても脆弱で、しばしば悪意やネガティブな力の方が優位にたつことを教わってきました。

キツネは皆がなかよく幸せになるのとは対極の、皆を自分とおなじくらい孤独で寒々とした生活に追いやり、嫉妬心を鎮め、満足感や支配する喜びを得るのです。まるでサイコパスですね。

カササギがイヌのもとへたどり着けるか、子供たちと話し合ってみるとおもしろいでしょうね。

 

本の作者

Ron Brooks

絵本画家、絵本作家、イラストレーター、(オ-ストラリア在住)

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https://www.youtube.com/watch?v=bJycrXNsGjs

 

Margaret Wild (南ア生まれ、オーストラリア在住)

http://www.thelitcentre.org.au/author/margaret-wild

f:id:cenecio:20161212164704p:plainMargaret Wild

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きつねのかみさま  あまん きみこ ・酒井 駒子

日本

女の子の名前はりえちゃんです。

 

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きつねのかみさま (絵本・いつでもいっしょ) 大型本 – 2003/12

(イラスト) ポプラ社

 
りえと弟は、きつねの子たちとなわとびをして遊びました。それはりえのなわとびなのに、きつねの子は神様がくれたというのです。
★2004年度日本絵本賞
★2004年度青少年読書感想文全国コンクール課題図書

<小学校低学年の部>
★全国学校図書館協議会第27回選定「よい絵本」

 

 

絵を描く人が 酒井 駒子 だと聞いただけでワクワクなのに、お話があまんきみこ、だなんて!二人でどんな世界を作り上げるんだろうなあと思って本を開きます。

 

その前に「きつね」

みなさんにとって、きつねはどんなイメージ?

私は動物も昆虫も鳥も何でも好きだけど、きつねは特に好き。顔の造作や、内気そうな目がいい。毛の色もきれい。あ、そうだ、白い毛のきつねもいたんだっけ。

ともかく好き。

でも一般にはネガティブなイメージ、ずる賢くて「悪玉」と性格づけがされていますね。とりわけヨーロッパでは超ワルモノ扱いです。民話や昔話の中でね。

 

でもベビーメタル(BABYMETAL)のおかげで、少しは挽回したかな。

ベビーメタルはヨーロッパでもアメリカでも圧倒的人気を誇るんです。2015年のツアーは、ベルギーには来なかったけれど、ラジオのニュースではその熱狂ぶりを伝えていた。

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http://ticket.st/livel/4416vi2tr

 

さて、やっとおはなしに入ります。

 

りえちゃんが言います。

おやつを たべおわったとき、あたし、なわとびのひもを わすれたことをおもいだした。

このように、絵本としてはかなり珍しいといえる、女の子の独白で物語がかたられるのです。あまんさん、やってくれますねえ。

なわとびの縄を公園に忘れたことに気づいて、取りにいく。弟のけんちゃんもついてくる。木の低い枝にひょいとかけたはずなのに、おかしいな、どこにもない。すると声が聞こえてくる。にぎやかな笑い声や歌声が。

おおなみ こなみ ぐるっと まわって きつねの め。

するときつねたちがなわとびをしているのが見えた。

こっそり見ている。

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声を出してしまい、きつねたちに見つかったので「こんにちは」とあいさつする。

するときつねたちは、いっしょに遊ぼう、と誘ってくれた。

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楽しく遊んでいたとき、ふと持ち手をみたら「りえ」と名前が書いてあるではないか。なあんだ、あたしのだった、と安心するりえちゃん。

ところが帰る時間になって、ちいさい子ぎつねがこう言うのだ。

「それ、あたしのよ。さっき みんなで なわとびしたいって、きつねのかみさまに おいのりしながら あるいていたら、こうえんの きのえだにかけてあったの。あたしのなまえまで かいてあるの。ほらね。」

 

「え、あんた、りえちゃんなの?」

 

あたし、びっくりした。

女の子は自分の縄を 持ち帰ることをあきらめ、さよならを言って家路につく。

そのとき弟のけんちゃんが高い声でいった。

 

「そうかあ。おねえちゃんは、きつねのかみさまだあ。くくくっ」

 

というお話でした。あまんきみこさんらしい終わり方でした。

私は大人なので、お話より絵の方を隅々まで味わいます。 

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ふたりが同じ名前、その前にきつねにも名前があるなんてすてきです。考えてもみませんでした。そしてきつねがこんなにも笑うんだ、ということもね。

 

作家 阿萬紀美子(あまんきみこ)1931年8月13日 生まれ。

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作品は大変に多く、小学校の教科書にも載っています。「ちいちゃんのかげおくり」「おにたのぼうし」「白いぼうし(『車のいろは空のいろ』シリーズの一篇)」などが有名です。

私の母は年齢が同じこともあって、大ファンです。きっかけは15年位前だったか、ラジオ番組であまんさんの作品世界の紹介を聞いたこと。そのあと「あまんきみこの本、あるだけ買ってきて」などと電話をかけてきたことがあります。

 

 

酒井 駒子さんは一度取り上げました。

cenecio.hateblo.jp

  おわり

 

追記:すごいブロガーさんがいます。酒井駒子研究。

http://blaine.org/sevenimpossiblethings/?p=2402

 

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